交配カレンダーでブランドの質をキープ
スイカは夏を代表する果実ですが、施設での栽培や生産技術の向上により、九州から北海道まで全国の産地をリレーしながら、3月から9月頃まで楽しめます。
「富里のスイカは5月上旬からハウス栽培物の出荷が始まり、大中小のトンネル栽培で6月をピークに7月中旬まで出荷が続きます」と、JA富里市営農指導課の
大島彩花さん。
高温で乾燥した土地を好むスイカ。温暖な気候で関東ローム層の粒子の細かい火山灰土壌が広がる富里市はスイカの栽培に理想的な土地で、昭和8年に栽培が始まりました。翌年に発足した富里村西瓜栽培組合によって栽培方法や出荷時の検査などを統一したことで高い品質が認められ、3年後の昭和11年に皇室への献上品となりました。そうして“富里スイカ”の名声は瞬く間に全国的に知られ、一大産地となりました。
「生産者全体で交配カレンダーによる徹底した栽培管理をすることで、安定した質の高いスイカを出荷しています。また、富里は昼夜の寒暖差が大きいことで糖度が高まり、香りもよくシャリッとしたスイカが育ちます」と大島さん。“富里スイカ”はひとつのブランドとなっており、市場から「富里スイカを」と指定されることも多いそうです。
栽培品種は「春のだんらん」、「祭りばやし」、「味きらら」など6〜7種類。「5月のまだ気温の高くない時期には香りよく甘みが強い品種、7月には果汁が多い品種など、季節に合った味わいを持つ品種を選定しているので、いつ食べてもおいしく召し上がっていただけます」。
カットスイカとして店頭に並ぶことが多いため、1玉8〜9kgある2L、3Lの大玉サイズが出荷の中心となっています。
目を離さず、適期を逃さず、手をかけて
5月の収穫期を迎えたハウスでは、つるが伸びて一面に繁った葉の間に、一列に揃った大きなスイカが顔をのぞかせていました。
「1株につき実は2つ。つるを4本伸ばしていって調整しながら、最終的には2つに仕上げます。つるを伸ばす向きや花の位置を揃えてスイカの実が一列に並ぶようにしていきます」と話す、JA富里市西瓜部副部長の篠原弘安さん。
2月から定植が始まり、整枝に芽かき、摘花、交配、摘果と、出荷時期に合わせてハウス、トンネルとそれぞれの作業が続きます。手のかかる作業が多い中で「揃えることで手入れも収穫もしやすく、しっかり目も届く」とのこと。1.1ヘクタールの畑で約9000個のスイカを出荷する篠原さんは、スイカ栽培歴43年のベテラン生産者です。
「作業も収穫も適期の見極めが重要」と篠原さん。「ハウスやトンネル内の開閉をこまめに行って換気し、温度調整することが肝心です。開花時期の遅霜や梅雨時期などの低温時の管理はもちろん大切ですが、スイカが高温を好むとはいえ、暑すぎてもだめ。香り、シャリ感が落ちてしまうのと、昼夜の寒暖差があることで糖度がぐんと増しますから」。
出荷前には実の詰まり具合、糖度をチェック。糖度11度以上が出荷の基準ですが、「基本、12度くらいはあります」と篠原さん。最盛期には8kg前後の重さのスイカを一日150個収穫し、ひとつひとつの玉を磨いてから箱詰め、出荷となります。
「スイカは鮮度が命。完熟で収穫しているので、購入したら3〜4日以内に食べて欲しい。新鮮なものはシャリ感と香りが違います」。選ぶときには、「縞模様がくっきりしていて、表面が凸凹し、緑の部分が少し盛り上がっているものが熟していておいしい」と篠原さんが教えてくれました。
英語でwater melon(ウォーターメロン)と呼ばれるように、スイカは約90%が水分で、喉や体の渇きを潤してくれます。利尿作用のあるカリウムをはじめ、赤い果肉にはβカロテン、リコペンも多く含まれます。
体がスイカを求める季節。北総台地で育まれた「富里スイカ」を是非、味わってみてください。
●JA富里市
【富里スイカ】生産概要
生産者:約170名
栽培面積:約150ヘクタール
出荷量:約33万箱(1箱2玉入り)
主な出荷先:関東、東北など