【三重県伊賀市】

伊賀のブランド梨、白鳳梨はくほうなし

忍者と松尾芭蕉のふるさと伊賀市。
市内羽根地区の19軒の生産者がこだわって栽培する
「白鳳梨」は、三重県の生産管理基準をクリアした「みえの安心食材」にも認定されているブランド梨です。
城づくりの名手といわれた藤堂高虎が築いた伊賀上野城。その城の別名「白鳳(はくほう)城」から名付けられました。
全国でも珍しい水田転換作物として梨栽培を行うJAいがふるさとを訪ねました。

袋をかけずに日光を当てて育てる

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「太陽の光をたっぷりと浴びた白鳳梨はジューシーで甘いですよ」と白鳳梨生産組合の樋口良紀組合長
 三重県北西部、伊賀市が位置する上野(伊賀)盆地。約400万年前まで古琵琶湖の湖底だったことに由来するミネラルを多く含んだ肥沃な粘土質土壌と、3つの河川が合流する水量の豊富な土地を活かし、米作りが盛んに行われてきました。
「水稲に代わる作物を検討する中で、”長十郎”を栽培したことがきっかけとなり、昼夜の温度差が大きい気候が梨の栽培に適していると、1948年から伊賀市羽根地区で水田の転作として”白鳳梨”の栽培が始まりました。果実に袋がけをしない無袋栽培により、太陽の光をたっぷり浴びて高い糖度となるのが特長です」と、JAいがふるさと営農部・農産販売課の森岡伸治さん。
“白鳳梨”ブランドで出荷している品種は幸水、豊水、あきづきの3種類で、出荷期間は幸水が8月上旬から下旬まで。続いて豊水とあきづきの出荷が始まり、9月中旬まで続きます。
 選果場では、形、色、傷などを1玉ずつ人の目によってチェックしてから、選果機のトレーに乗せてサイズを分別。再度、ひとつずつ手に取りながら最終確認をして箱詰めしていきます。3L、4Lサイズを中心に最盛期には1日16トンを出荷します。
「堆肥など有機質肥料を用いた土づくりや減農薬栽培に取り組んでいます。2003年からすべての生産者が環境負荷の軽減に配慮した持続的な農業に取り組んでいます」と話す、白鳳梨生産組合の樋口良紀組合長。
 白鳳梨は、人と自然にやさしい生産方法や栽培履歴について、第三者の厳しいチェックを受けるなどの要件を満たした農作物にのみ与えられる三重県の「みえの安心食材」に認定されています。また、2015年には伊賀の優れた商品として「IGAMONO(いがもの)」ブランドにも選ばれ、知名度を上げています。
「生産組合には熱意のある若手生産者もいて、常に生産者全体で白鳳梨ブランドの質の向上に努めています。より多くの方々に白鳳梨をお届けしたいです」と、樋口組合長。
 シンガポールや香港への輸出も進む白鳳梨。今後も積極的な取り組みを進めていくそうです。

生産者全体で質、量ともに向上を目指す

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 梨の栽培は8月の収穫に向けて1年前から始まります。
「前年の秋に土づくりと同時に枝のせん定作業をします。4月に入ると摘蕾、花粉噴射機やハチを使った授粉作業、5月には摘果や芽かきなど季節ごとに作業があります」。
 樋口組合長は、60アールの畑で白鳳梨、40アールの水田で稲を栽培しています。
「大玉に育てるためには、摘蕾が欠かせません。まず花の数を減らし、実が着き始めたら摘果して、さらに実の数を厳選します。枝葉が育ってきたら、実にしっかり日が当たるように調整もしていきます。袋をかけないので、実を傷つけないよう慎重に管理することも大切。収穫はもちろん、収穫後の作業など、常に丁寧に扱うよう徹底しています」とのこと。
 収穫は朝5時から午前中いっぱい行い、午後は1時半から選果場で選別や箱詰め作業が夕方まで続きます。

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 近年の気候変動は梨の生育にも影響を及ぼし始めているそうです。暖冬で花芽がつかないとか、樹が枯れてくるなど、一層のきめ細かな栽培管理が求められています。
 樋口組合長は今後に向けて畑を20アール拡大し、苗木の生育を始めました。
「白鳳梨の長い歴史の中で培われてきた栽培技術を継承しつつ、日々の生長を見ながらこまめな対応と管理を積み重ねて、美味しさを追求していくことが大切だと感じています。食べた人が笑顔になるよう、生産者一丸となって、白鳳梨のおいしさを広げていきたいです」と、意気込みを語ります。

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生産者の負担を軽減して、生産に励んでもらえるよう2020年に選果機を更新。一玉ずつ念入りに選別します

 水分が90%近い梨は、夏バテしやすい季節の水分補給にぴったり。13度前後という高い糖度を誇る白鳳梨ですが、冷やし過ぎると甘みを感じにくくなるので「食べる1~2時間前に冷蔵庫で冷やして食べるのがおすすめ。朝に食べると体が潤います」と樋口組合長。
 目覚めのとき、喉が渇いたとき、食後にと、みずみずしく果汁たっぷりの梨を楽しみましょう。

●JAいがふるさと
【白鳳梨】生産概要
生産者:19名
栽培面積:15.1ヘクタール
出荷量:約340トン(2021年度)
主な出荷先:三重県内、関西

「高品質の白鳳梨をより多くの方にお届けしたい」とJAいがふるさと営農部・農産販売課の森岡伸治さん

2022.08更新

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