400年以上もの歴史ある会津の名産
福島県西部に広がる会津盆地は、磐梯山などの山々に囲まれて夏は暑く冬は寒い盆地特有の気候と、阿賀川の豊かな水量に恵まれた肥沃な土地が農業に適しており、稲作や野菜の栽培が盛んです。南部の日当たりの良い扇状地には果樹園が広がり、秋に色づいた柿がたわわに実り、会津の風物詩となっています。
「〈みしらず〉は漢字で書くと〈身不知〉と書き、その名前の由来は①たくさん実をつける身の程知らずな柿、②将軍が未だこのようなおいしい柿を知らずと称賛、③我が身も考えずに食べすぎるほどおいしい柿と、3つの説が知られています。福島原産の品種で、やわらかくとろける食感の果肉と、ジューシーで上品な甘みが後を引くおいしさで長く食べ継がれ、会津の名産になりました」と、JA会津よつば美里営農経済センター営農課の佐藤健一郎係長。
会津みしらず柿のおいしさは2〜3月の剪定、5月末の摘蕾(てきらい)、6月末の摘果や追肥、隔月での防除作業など、こまめな手入れによって作られます。鮮やかな橙に色づかせるためには、日当たりの調整が大切です。
「葉が光合成で作り出す養分が実を大きくさせるので葉を茂らせることは重要なのですが、日当たりが不十分だと実が硬く、食べる時にガリガリした食感になってしまいます。実全体にまんべんなく日が当たるよう、ヘタの周りの葉を取ったり、真夏の日差しが強い時は、数枚の葉で実を覆って日よけしたりと、その時々の状況を見極めながら一つひとつの実を調整しています」と説明してくれたのは、JA会津よつばみどり地区果樹部会柿部の石井勝利さん。石井さんは代々続く柿農家の後を継ぎ、全部で18アールある3ヵ所の柿園を1人で切り盛りしています。
霜が降りる前に一気に収穫
収穫は、10月中旬〜11月中旬までの約1ヵ月間、朝8時半〜15時半まで行います。実全体がしっかりと橙色に色づいているかを一つひとつ確認し、丁寧に収穫します。
「うちでは、刀根早生(とねわせ)、平核無(ひらたねなし)、会津みしらず柿の3品種を栽培していますが、会津みしらず柿は収穫適期が晩秋なので、どんどん収穫しないと霜が降りてしまいます。霜にあたると実がやわらかくなり過ぎ、出荷できません。3ヵ所の柿園を巡回しながら、1日で18kg入りのコンテナ15個ほどを収穫します。自宅と柿園を何往復もするから本当に大変です」と石井さん。
「焼酎などで渋を抜くアルコール脱渋法だと食べ頃になるまでに約2週間かかりますが、炭酸ガスによる脱渋だと5日間で渋が抜けます。出荷最盛期は、一度に630コンテナ(約1260kg)の柿を脱渋できる装置を2台フル稼働させていますが、それでも脱渋待ちのコンテナが積み上がります」と話す、JA会津よつばの佐藤係長。今後は東南アジアへの輸出といった販路拡大にも力を入れていきたいと意気込みを見せます。
(取材:2022年11月上旬)
●JA会津よつば
【会津みしらず柿】生産概要
生産者:115名
栽培面積:約32ヘクタール
出荷量:約150トン(2021年実績)
主な出荷先:県内