農業現場の労働力確保へ向けた取り組みは、全国を6地域に分けたブロック別労働力支援協議会によって進められてきました。新たに設立された全国労働力支援協議会(以下、協議会)では、各ブロックで培ったノウハウや課題を集約し、全国規模での検討・実践を行っています。特に力を入れているのが「パートナー企業連携による農作業請負」です。農作物の定植や収穫など、一時的に人手を必要とする農家からの依頼を受けて、JAや全農が取りまとめてパートナー企業に依頼し、パートナー企業が雇用契約を結んでいる人材でチームを編成して、作業にあたる仕組みです。生産者・JA事業を支援し、農業生産基盤の維持に向け、この取り組みの拡大を進めています。
では、参加者はどのような形で農作業をするのでしょうか。2021年4月からスタートした「さくらんぼ収穫」の農作業受託事業を紹介します。この事業は、全農山形県本部が全体のコーディネート、連携する株式会社JTBが人員募集・シフト調整して受託した農作業を行い、参加者はJTBと雇用契約を結びます。参加者は1日単位で勤務でき、勤務日も選択可能です。
現場では、3~4人でチームを組んで収穫や箱詰めを実施。作業経験のある参加者が必ずチームに入って指導するので、農作業未経験でも安心です。一方、農家は作業内容を教える時間が必要なくなるので、その時間を自分の作業に充てられます。参加者の賃金は時給制ですが、農家が支払う料金は箱詰めした製品を重量で計測する出来高払い。参加者は働いた分が収入になり、農家は成果に見合った分の支払いをするという明解な報酬・賃金体系です。
生産現場にとっては繁忙期など必要な時のみ人手を確保でき、農業に関心のある人や移住先で仕事を探す人にとっても参加のハードルが低い。労働力不足に悩む生産現場の支援と地域の雇用創出が両立する関係を目指しています。
「ちょっとやってみたい」と思ったら、いつでもチャレンジできる点も魅力です。協議会では、ライフスタイルの1割に農業を取り入れる「91農業」を提唱しています。農業を本格的に始めると気負うのではなく、副業や子育ての隙間時間や、生活のゆとり時間に、少し農業に触れてみる…そんな気軽な気持ちで始めてみませんか。
SDGsなど多様性の尊重が求められる今、幅広い世代との交流や日常と異なる体験は、考え方の幅を広げ柔軟性を高めるきっかけにもつながります。生活に少し農をプラスする、隙間時間に少し地域で働く。今、そんな新しい形での農業へのかかわり方が全国に広がっています。
〇9本業1農業:休みの日に1日農業、新しい副業の形
〇9育児1農業:子育てしながら一時期に農業、新しいパートの形
〇9旅行1農業:旅行の1日に農業、新しい旅行の形
〇9夢追1農業:夢を追いながら一時期に農業、新しいバイトの形
〇9自宅1農業:家以外に居場所が一つ増える、新しい就労支援の形