生産コストを転嫁できない国産農畜産物【持続可能な適正価格】

国産を食べる喜びをこれからも。
日本の食と農の未来を考えてみませんか

国産農畜産物が「あたりまえ」に手に入る日常は、農業によって支えられています。
農業は天候の影響を受けやすく、国産農畜産物の価格は需要と供給のバランスによって変動します。
日本の農業は今、高齢化や資材価格の高騰で危機的な状況にあります。
私たちJAグループは、それらの課題解決に向けて取り組んでいますが、「あたりまえ」が続く未来のために、皆さんも一緒に考えていただけませんか。

 国産農畜産物を生産して食卓に届けるために必要な資材のほとんどが値上がりしています。地球規模で人口が増加する中、世界中から食料を買い進める国もあり、近年、世界の穀物価格は高騰しています。さらにロシアのウクライナ侵攻によって、肥料やエネルギーもひっ迫し、世界の穀物相場は続伸、加えて円安も生産コストの上昇に拍車をかけています。一例ですが、2020年と比べてʼ24年平均では、米や野菜の栽培に必要な肥料や、家畜を育てる飼料価格は共に約1.4倍、機械の動力やハウス・畜舎のボイラーに使われる重油価格は約1.5倍となっています。
 一方で、農畜産物全体の価格は、ʼ20年に比べて平均1.1倍程度しか上がっていません。それも生産コストと関係なく、夏の猛暑による生産量の減少や、一時的な需要増加(訪日外国人の消費増加や災害への備えなど)が値上がりの理由です。米の価格はʼ21年からʼ24年8月までʼ20年の平均価格を下回る状況であり、長期にわたり生産コストに見合わないものでした。米以外にも再生産可能な価格に届かない農畜産物はたくさんあります。

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https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/noubukka/

 加工食品のほとんどが原材料価格の高騰を理由に値上がりしているのに、なぜ生産コストが上がっても農畜産物の価格は上げられないのでしょうか。農畜産物の価格は、生産コストの変動に関係なく、需要と供給のバランスによって決まっているからです。天候によって生産量や品質が左右されやすいという農畜産物固有の事情もあります。コロナ禍で日本全体の消費が落ち込む中、農畜産物の生産量に対して需要が少なくなり、価格が低迷したことも影響しています。
 全農は地域のJAとともに生産者にさまざまな支援を行っています。例えば、①デジタル技術やロボットなどを活用したスマート農業の導入支援、②適切に肥料を使用するための土壌分析サービスの提供、③畜産では国産飼料原料の活用や、家畜堆肥を有機肥料として提供する耕畜連携など生産コストを低減する取り組みを進めています。
 しかし、生産者が直面している生産コストの上昇は、これらの支援では抑えきれません。なんとか耐えてきた日本の農畜産業はもう限界。農業を続けることが難しいほど窮地に立たされています。
 これからも皆さんの食卓に安全・安心で新鮮な食べものを届け続けるためには、生産者が農畜産物を作り続けることができる、持続可能な、適正な価格設定が不可欠なのです。買う人は安い方がいい、売る人は高い方がいい、立場が変われば価格に対する考え方は変わります。農畜産物の価格が上がると「消費者の台所を直撃」と報道されますが、その価格に生産コストは反映されていません。他の商品に比べて、農畜産物の価格は高いでしょうか。
 価値と価格に納得して、国産農畜産物を選び続けてほしいから、皆さんの考えをお聞かせください。「あたりまえ」が続く未来のために……。

2025.03更新

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