米麹の酵素パワーが生み出す【麹甘酒】

近年注目を集める日本伝統の発酵飲料
甘酒の豊富な栄養で夏バテ予防を

「飲む点滴」といわれ注目されている甘酒は、夏の季語とされ、 古くから夏の食欲が落ちる時期によく飲まれていました。
甘酒にはふた通りの製造方法があります。
一つは米麹を原料としアルコールを含まない「麹甘酒」。
もう一つは日本酒を搾ったあとの酒粕で作る「酒粕甘酒」。
こちらは砂糖で甘みを出し、微量ですがアルコールが含まれます。
今回は麹菌の働きが作り出す麹甘酒の魅力に迫ってみました。

 甘酒の歴史は古く、奈良時代の日本書紀に登場する木花開耶姫(このはなさくやひめ)が醸した天甜酒(あまのたむざけ)が起源のひとつと考えられています。夜に仕込めば朝にでき上がるため「一夜酒(ひとよざけ)」とも呼ばれ、宮中では夏になると天皇などに供していたそうです。夏の体力消耗時の栄養補給として重宝され、江戸時代には甘酒の行商が人気を集め、暑い夏の飲み物として広まったことから、俳句では「一夜酒」「甘酒売り」「甘酒」は夏の季語とされています。
 麹甘酒の原料は一般的に米と米麹と水。米麹は蒸したお米に麹菌を繁殖させた発酵食品の素です。米麹は日本酒、みりん、酢、米味噌などの原料としても使われます。日本人の食生活に欠かせない発酵食品の原料として重要視された麹菌は、2006年に、日本醸造学会によって”国菌”に認定されています。お米の中のデンプンが、麹菌の働きによって生み出される酵素(アミラーゼ)の力で分解されてブドウ糖になります。ごはんを噛んでいるとお米が口の中で甘くなるのは唾液の中にアミラーゼが含まれるためです。
 米が主原料の甘酒ですが、麹菌のもつ働きによって、デンプンはブドウ糖に、タンパク質はアミノ酸に分解され、ごはんそのものよりも体に吸収されやすくなっています。また、代謝促進や疲労回復に重要なビタミンB群が含まれています。体内に入ったブドウ糖はすぐにエネルギーとなりますし、喉ごしのよい甘酒は栄養補給にうってつけ、飲む点滴といわれるゆえんです。
 麹甘酒は、米由来の食物繊維や、オリゴ糖を豊富に含んでいるので、腸内の善玉菌のエサとなって腸内環境を整え、便秘の解消、免疫力向上などの効果が期待できます。
 甘酒は、エネルギーのもとであるブドウ糖、体の機能を調節するビタミン、体を作るもとになるアミノ酸、この3つが豊富に含まれる栄養価の高い飲み物です。子どもや高齢者、夏バテなどで体の弱った人たちの味方ですが、気をつけたいのは飲み過ぎて摂取エネルギーが増えすぎてしまうこと。食事の甘味、おやつの甘味としてとり入れることをおすすめします。
 甘酒は牛乳や豆乳で割ったりすりおろした生姜を入れたり、果物と一緒にスムージー風になどアレンジして楽しめます。肉や魚を甘酒に漬け込むと麹酵素の働きで柔らかく仕上がり、カレーや肉じゃがといった煮物や、卵焼き、ドレッシングなどに加えると深みのある味わいになります。甘酒の発酵パワーを上手に食卓にとり入れましょう。

なるほど情報
炊飯器で簡単に手作りできる 甘酒

●材料(3~4カップ分)/うるち米…1合、米麹(乾燥)…200g

1. 炊飯器にうるち米(またはもち米)を入れてお粥を炊く。
2. お粥が炊けたら、炊飯器の蓋を開けて60℃位まで冷ます。米麹をもみほぐしてお粥に混ぜ、木べらなどでよく混ぜる。
3. 炊飯器の蓋を開けたまま布巾をかぶせ、保温スイッチを入れたまま50~60℃に保ち、時々かき混ぜて温度を一定にし、6~8時間かけて発酵させる。
4. よく混ぜて味見をし、甘みが足りない場合はさらに1~2時間おいて仕上げる。
詳しくはこちら

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参考資料:
農林水産省「aff」(2018.12月号)ほか

【お詫び】
Apron本誌8月号15P「なるほど!全農」内「“なるほど”情報」に掲載の写真について
本来、印刷対応の画像を載せるべきところ、仮画像のまま印刷してしまいました。
大変申し訳ございませんでした。深くお詫び申し上げます。

2022.08更新

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