家庭菜園・きほんの「基」肥料編

カボチャの蕾や実が落ちてしまう原因は?

指導◎岡本 保(JA全農 肥料研究室技術主管)イラスト◎かとうともこ

Q昨年は暑さのためかカボチャの雌花が咲かず、蕾で落ちてしまいました。生理的落花といわれたのですが、他に肥料面で考えられる原因はありますか?

A カボチャには雌花と雄花があり、花弁が大きく、がくの下に小さな玉(子房)があるのが雌花、花弁が小さく子房がないのが雄花です。どちらも早朝に開花します。ところが夜間の気温が高いと開花しないで蕾のまま落ちてしまうことがあります。これを「生理落花」といいます。品種や栽培方法にもよりますが、夜間の気温が26℃を超えると、開花が抑制されるというデータがあります。肥料や水を適度に与えてカボチャを健康に育てることにより、生理落花を減らすことはできますが、熱帯夜が続く昨今の夏は、完全に防ぐことはできません。
 ところで、カボチャ栽培では生理落花とともに「生理落果」もしばしば問題になります。生理落果とは、雌花が開花して幼果の肥大が始まっても、ある程度の大きさまでしか育たずに落ちてしまう現象です。生理落花を免れて開花した雌花を、生理落果をさせずに着実に育てて、収穫まで至らせるためには、カボチャの蔓や花の管理が重要です。生理落果の発生には着果節位、すなわち成り蔓の雌花を着ける節より下位に着いている葉の枚数と、開花時の受粉の成否が大きく関与します。品種や栽培法にもよりますが、例えば西洋カボチャの「みやこ」や「えびす」を親蔓1本仕立てで栽培する場合、最初の雌花は10節目以上、すなわち親蔓に本葉が少なくとも10枚以上着生してから着けます。15節目程度がベストです。低い節位に着いた雌花は、たとえ開花しても果実を育てるための葉の枚数が足りないので、収穫に至るまで育たずに生理落果するか、または育ったとしても小さい果実になってしまいます。このため親蔓の10節目よりも下位に、もしも雌花が着いている場合は、早めに除去します。元気な株(葉身が大きく、葉柄が長く、蔓の先端が上を向いているような株が元気な証拠)には、1本の蔓に二つ目の雌花を着けることもできますが、その場合は一番目の雌花から5節以上の間隔を空けます。連続した節位に着けても、二番目の雌花は果実として育ちません。
 また、カボチャの花が実を結ぶためには、人工授粉を行う必要があります。人工授粉は開花当日の早朝に行います。方法は開花したての雄花を摘み取り花弁を除去した後、その雄しべを同じく開花したての雌花の柱頭部分に軽く触れるようにして受粉させます。カボチャの花粉は早朝が一番元気なので早朝(遅くとも午前9時まで)に行うのがポイントです。受粉がうまくいかないと雌花が咲いても果実は育ちません。適切な節位に着果した果実が肥大を始めたら、肥料の過不足が起こらないように、適量の追肥を行ってください。カボチャは地を這う蔓の途中からでも根(不定根といいます)が生えてくるので、追肥は株元ではなく蔓の下に施用してもOKです。蔓が伸びるスペースが4m程度確保できている場合、NK化成(16-0-16)ならば一株あたり40g程度を施用し、土が乾いていたら水やりします。このようなこまめな管理で「生理落果」を防いでください。

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2019.12更新

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