第57回 長野ヒデ子さん

ボストンで棚田のお米を

 保育園の頃から私の絵本のファンの男の子が、アメリカはボストン近郊の大学を卒業する。「ぜひ卒業式に!」と懇願され、孫のような子の卒業式に出席するためボストンに飛んだ。大学は落ち着いた古い街ロードアイランドにある。背も高く大きい人ばかりのアメリカは食生活も大違い!スーパーに行ったら食料品を山のように買いこんでいる。私も太っても平気と、しっかり3食を食べた。海が近いのでサーモンやエビ、ロブスターなどおいしいものがいっぱい。大きなビフテキにソーセージに、ハンバーク等を食べている人を横目で見るだけでお腹いっぱいになる。旅の後半はごはんとみそ汁が恋しく、帰りの機内食は和食を頼んだが、炊き立てのごはんと大違いだった。
 我が家はひょんなことから佐賀の棚田でお米を作っているNさんに出会い、棚田米の味に魅惑されNさんと親戚のようになって20年。娘は嫁ぎ先でも食べなれたお米が良い、と棚田米を送ってもらい2人の子育てをした。子どもたちも梅干しのおにぎりが大好きで、おやつにもなる救世主。健康は棚田米から頂いている。Nさんを訪ねて棚田にも行った。バッタやイナゴ、カエルと蛇の住みかの命をもらっているお米だ! 感動して紙芝居「おにぎりおにぎり」を創った。絵本にもした。セリフに♪をつけたら「♪おにぎりぎゅっ!」と歌いだしたくなる絵本になり、全国から「おにぎりの歌」が届けられ、沖縄からはサンシン調もあれば、絵本作家で歌手の中川ひろたかさんまで歌いだしびっくり!これも棚田のお米の力のなせる業。だのにNさんは、高齢でお亡くなりになられ棚田の後継者はなく棚田米が消えた。棚田米は宝だと心から思っていたのに残念なことであった。
 さて、ボストンから「ごはんごはんだ!」と帰国すると、なんとあの芥川賞候補になった、くどうれいんさんから牛乳瓶に詰めた海でトレトレのウニが届いた!牛乳瓶だよ!驚き。「炊き立てご飯にのっけて食べてください」とある。「きゃあ!ウニウニ!」彼女も子どもの時、私の絵本「たいこさん」の大ファンで知りあった仲。いまでは人気作家で歌人。私は孫のような子どもの時からのファンにバチリと支えてもらっている、ばーちゃんなのである。

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イラスト:はやしみこ
長野ヒデ子

長野ヒデ子(ながの ひでこ)

1941年今治市生まれ。『とうさんかあさん』で日本の絵本賞文部大臣奨励賞。『おかあさんがおかあさんになった日』で産経児童出版文化賞。『せとうちたいこさんデパートタイ』で日本絵本賞。紙芝居の作品多数。紙芝居文化推進協議会会長。エッセイ『ふしぎとうれしい』、『絵本のまにまに』。
7月15日~10月29日 愛知県半田市の新美南吉記念館で、新美南吉生誕110年「南吉と長野ヒデ子の母の世界展」開催。

「絵本のまにまに」石風社
「絵本のまにまに」 石風社

2023.09更新

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