栽培適地の「いも地」で育てる
「ながいも栽培の歴史は古く、1891年頃に埼玉県から導入され85年ぐらい前までは自家用として栽培されていました。1935年から京阪神市場への出荷が始まり、1955年以降、畑地灌漑事業などにより、スプリンクラー施設が整備されて本格的に栽培が始まりました」と、説明してくれたJA鳥取中央北栄営農センター果実園芸課副主査の中家裕基さん。
また、北条砂丘地は地下水位が低く、粒径0・3mm以下の土粒含有割合が50~70%の間にある「いも地」が多いことから、高品質なながいもの栽培に最適なのだそうです。
JAでは共同集荷体制を整えて品質の統一化をはかり、長らく「砂丘ながいも」を栽培して高品質、安定出荷に努め、西日本一の産地として知られています。さらに、市場から「もっと粘りが強く、折れにくく扱いやすい短い品種が欲しい」との要望に応え、鳥取県のオリジナル品種が誕生しました。
「鳥取県園芸試験場で1990年より、ながいもの花粉を粘り気の強い品種の”いちょういも”に交配して試験管培養を行い、形状がよく粘り気の強い系統を選抜・育成したのが”ねばりっこ”です。名前の通り粘りが強く、肉質が緻密で果肉が白いのが特長です。アクが少なくて、砂丘ながいもより短く、甘みとコクがあります」と、JA鳥取中央の中家さん。
これまでの「砂丘ながいも」に新品種の「ねばりっこ」が加わり、生産者の栽培意欲にも拍車がかかります。
地上の蔓を見て、的確な管理作業
「1mくらいの長い棒を使っていもの周りの砂を丁寧に取り除いて、1本1本傷をつけないように折れないように手で引き抜いていきます。1列掘り上げるのに2~3時間くらいかかります。収穫は11月から2月頃まで続き、寒くなると霜が降りるので、陽が昇ってからの作業となります。よく『収穫作業は大変だね』といわれることが多いけど、砂の中にどんないもがあるのか探し出すのは宝探しみたいにワクワクするので、好きな作業です」と、笑顔をみせてくれた吉本部会長。
「砂丘ながいも」と「ねばりっこ」の栽培の大きな違いを尋ねると、「ながいもは切りいもを種いもとして植えつけます。ねばりっこは”むかご”を1年かけて育てて、さらに1年かけて種いもにしてから植えつけて収穫するので、3年がかりです」とのこと。時間も手間もかかるねばりっこは、まさに宝物そのものです。
最後に、吉本部会長におすすめの食べ方をお聞きすると「一番はお好み焼きです。粉なしで、すりおろしたねばりっこに具材を混ぜて焼くだけ。ふわっふわっのお好み焼きになります。あとは、ポテトサラダも美味しいですよ」。
粘りが特長のねばりっこならではの美味しさをぜひ一度お試しください。
●JA鳥取中央
【ねばりっこ】生産概要
生産者:93名
栽培面積:27.4ヘクタール
出荷量:800トン
主な出荷先:広島、関東、長野、京阪神、九州、県内など
