【広島県尾道市】

国産レモンの一大ブランド せとだエコレモン

文◎編集部 撮影◎磯野博正

レモン生産量日本一の広島県。主に瀬戸内海の島々を中心に生産され、県内最大の生産量を誇るのが国産レモン発祥地といわれる瀬戸田町です。
柑橘類の栽培に適した気候風土に恵まれ、露地栽培やハウス栽培、貯蔵レモンを連携しながら周年出荷体制を整えています。
広島県の特別栽培農産物にも認証されている「せとだエコレモン」の生産に取り組むJA三原を訪ねました。

国産レモン発祥地ならではのこだわり

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JA三原柑橘事業本部せとだ柑橘販売課の片山武志係長は柑橘農家の三代目としてレモン生産を行っています
 瀬戸田町は瀬戸内海のほぼ中央に位置し、生口島と高根島のふたつの島からなります。島の半分が傾斜地で日当たりがよく、年間平均気温は15・5℃と温暖、土壌は水はけのよい花崗岩で年間を通して降水量が少ないなど、柑橘栽培にとても恵まれた気候条件をそなえていることから、古くから柑橘類の栽培が盛んに行われてきました。レモン栽培は明治時代から始まったといわれ、国産レモン発祥の地とされています。当初は自家消費用でしたが、昭和に入ると瀬戸田をレモン産地にしようと園地の増殖が図られ、戦後のレモンブームを牽引するなど日本一のレモン産地として知られるようになりました。
 広島県は国産レモン生産量の約5割を占め、国産の2割が瀬戸田町産です。露地栽培のレモンは5月中旬頃に花が咲き、実をつけて成長します。収穫時期は10月から翌年の5月までと長く、収穫する時期によって色や香り、酸味、果汁などそれぞれ違った特徴のあるレモンが楽しめます。
「端境期にあたる夏場(6月下旬~9月)はハウス栽培、1月~4月に収穫したレモンを鮮度保持フィルムで包装・貯蔵し6月~8月に出荷するなどして、1年中レモンを楽しんでいただける体制を整えています」と、JA三原柑橘事業本部せとだ柑橘販売課の片山武志係長。
 露地栽培で10月から12月に出荷されるものとハウスレモンは皮が緑色の「グリーンレモン」で、早摘みのため爽やかな香りとスッキリとした酸味が楽しめます。そのまま木にならしておくと黄色く色づき、1月から5月までは酸味がまろやかで甘さが増し、果汁たっぷりの「イエローレモン」が味わえます。
 また、環境への配慮と農薬や化学肥料を減らした特別栽培農産物の生産に取り組み、「せとだエコレモン」のブランドで出荷しています。せとだエコレモンは平成20年に特別栽培農産物として広島県から認証されており、果汁はもとより、果肉や果皮まで安心して丸ごと食べられると人気です。

規格外もすべて利用

【写真左】スケールでサイズチェックをしながら選別、収穫します【写真右】大切に育てられたレモンは一つひとつ手摘みで収穫されます
 片山家は60年以上前から瀬戸田町でレモン栽培を行う柑橘農家。10年前に片山係長が3代目として後継者になりました。ご両親を中心に温州みかんやはっさくなど10種類以上の柑橘を栽培し、片山係長は主にレモンを担当しています。「レモン栽培のよいところは収穫期間が長いこと。他の柑橘の作業に合わせてスケジュール調整でき、労力の分散が可能です」と片山係長。しかし、レモンの枝にはトゲがあるので台風など風が強いとスレて果実に傷がついてしまったりして、どうしても市場出荷できない規格外のレモンが出てしまいます。それでも片山係長は「瀬戸田のレモンは出荷規格外も余すことなく加工品にしているので、捨てるものがないんですよ」と胸を張ります。ジュースやのど飴、ドレッシングにレモン塩、レモンの蜂蜜漬けなどなど、たくさんの商品に加工され、親しまれています。生果販売から加工品まで、販売が安定していることもレモン栽培のメリットと片山係長は話します。

【写真左】型枠に入れてハートや星形のレモンも生産【写真右】選果場に集められたレモンは人の目で、大きさや形、キズなどを厳しくチェック
 輸入レモンの自由化で国産レモンの値崩れが起きてしまったときには、レモンの実に型枠をかぶせてハート形や星形のレモンを栽培するなど、付加価値を高めて販売しました。「瀬戸田のレモンの品質と可能性を広げるためには、高品質なレモンを作り続けることが肝心です。そして、より多くの人に瀬戸田のレモンの美味しさと楽しみ方を知っていただきたいですね」と語る片山係長。「国内最大のレモン産地だからこそできることがもっとあるはず」というJA三原販売課職員としての視点に加えて、レモン生産者としての日々の経験から、新たな取り組みが生み出されていきそうです。
 安全・安心な栽培管理をしたせとだエコレモン、果汁だけではなく、ぜひ、皮まで料理にお使いください。

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エコレモンの特長を活かしたさまざまな加工品は地域の名産品としても人気です

●JA三原柑橘事業本部
「広島レモン」(せとだエコレモン含む)生産概要
生産者:418戸
栽培面積:107ヘクタール
出荷量:1340トン(2021年予想量)
主な出荷先:県内、関東、京阪神など

2022.03更新

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