【京都府相楽郡精華町】

特有の風味と甘みが身上 伏見とうがらし

文◎編集部 撮影◎磯野博正

伏見とうがらしは江戸時代から京都市の伏見地区で栽培されてきた京の伝統野菜のひとつです。唐辛子といってもピーマンなどと同じで辛味がなく、細長い形をしていることから「伏見甘長とうがらし」とも呼ばれます。果肉は柔らかくて爽やかな風味と甘みがあり、βカロテンやビタミンCなどの栄養素が豊富。食欲が低下する季節に夏バテ解消野菜として古くから食べられ、重宝されてきました。府内の主要産地、JA京都やましろを訪ねました。

肝心かなめの土づくり

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「栽培方法を若い世代に伝えていきたい」と、JA京都やましろ伏見とうがらし部会の今西和男部会長
 伝統に育まれた京野菜のひとつである伏見とうがらしは、京都の伏見地区で作られていたので、その地名から名付けられました。
「京都の南部(山城地域)に位置する当JA管内で伏見とうがらしは60年以上前から栽培されており、生産量は府内トップクラスです。京のブランド産品にも認定されています」と、説明してくれたJA京都やましろ精華町支店営農経済課の奥田芳成営農指導員。
 京のブランド産品は、安全安心と環境に配慮した「京都こだわり生産認証システム」(※1)により生産されたものの中でも、品質・規格・産地を厳選したものだけが、「京マーク」を付けて販売できる信頼の証です。
 6月初旬、収穫最盛期を迎えたJA京都やましろ精華町支店伏見とうがらし部会の今西和男部会長のハウスを訪ねました。
「例年4月中旬頃から収穫が始まりますが、今年は春の寒暖差が大きくて栽培管理に苦労しました。5月の連休以降、気温も上がってやっと最盛期を迎えることができました」と、笑顔の今西部会長です。
(※1)京都府特産物育成協議会が、京都こだわり栽培指針(減農薬・減化学肥料など)に沿った栽培状況と記帳のチェックを実施し認証する。

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 精華町ではハウス栽培が主体で4月から8月末までの出荷となりますが、府内ではハウス、露地栽培など季節に合わせた作型を駆使し、ほぼ一年中リレー出荷されています。
「高品質なものを収穫するには、土づくりが重要です。うちでは収穫が終わると、真夏の日光を利用してまず土を太陽熱消毒します。その後、堆肥などの有機肥料をたっぷり入れて土づくりをしていきます。有機物は土壌中の微生物のエサとなり分解されて、土の通気性や保水性を高めてくれます。有機肥料は効果が出るまで時間がかかるけど、元気な土は病害虫にも強く、何より品質のいいものがとれるんだよね」と、今西部会長。環境に配慮し、減農薬で行う栽培は、まさに京のブランド産品にふさわしいといえます。

1本1本、手摘み手選別

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ハウス内の温度が生育に良い25℃前後になるよう扇風機を設置して調節します
 主枝を上へ上へと紐を使って誘引し、草丈が2mくらいになるまで収穫が続きます。何かストレスがかかると実が曲がったり、100本に1本の確率で辛味がでたりすることがあるため、「暑いのか寒いのか、水が足らないのか肥料が足らないのかなど、様子をみてこまめに世話をしてやることが大切」といいます。

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完熟した赤い伏見とうがらしは甘みが増し、料亭などから人気
 収穫は朝7時頃から3時間ほどかけて、1本1本手摘みで行います。「鮮やかな緑色で、長さ12~15cm、ほどよく柔らかいもの」を選んで摘み取ります。その後、作業場に運んで1本1本手選別しながら、箱詰めしていきます。
「規格は4段階。12cm以上で真っ直ぐなものは”秀”やや曲がりのあるのは”優”、15cm以下で弓なりは”良”、曲がりの大きいものは”並”です。秀品で1箱(1kg)100本くらい詰めます」とのこと。多いときは1日60~70箱詰めて、JAの出荷場に午後3時までに出荷します。

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「秀」や「優」品は並べて、そのほかの規格はばら詰めにします
「曲がっていても味に変わりはないので、料理によって使い分けてほしい」と、今西部会長。じゃこと炊いたものは京のおばんざいでおなじみ。油との相性がいいので炒め物や天ぷら、揚げ物などさまざまな調理方法で味わえます。「小さいころから伏見とうがらしの味に慣れ親しんできた京都の人に選ばれるものを届け、京の食文化を伝えていきたい」という思いで今西部会長は栽培を続けています。
 店頭で見かけたらぜひ、京都の伝統野菜、伏見とうがらし特有の柔らかな食感と爽やかな風味、甘みをご堪能ください。

●JA京都やましろ(精華町)
【伏見とうがらし】生産概要
生産者:11名
栽培面積:40アール
共撰出荷8トン(2021年実績)
主な出荷先:関西、関東など

「ブランド産地として確かな品質を維持し続けていきたい」と、JA京都やましろ精華町支店営農経済課の奥田芳成営農指導員

2022.09更新

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