【秋田県横手市】

こだわりのぷりぷり肉厚 菌床生しいたけ

文◎来栖彩子 撮影◎磯野博正

煮物、天ぷら、焼き物、鍋物など、多くの和食に欠かせないしいたけ。日本では江戸時代から栽培されている代表的な食用きのこで、英名でも「Shiitake」と呼ばれています。
秋田県は京浜地区の中央卸売市場で全国一の出荷量を誇る産地で、国産の木材を使った菌床栽培により、一年を通して安定したしいたけの出荷体制を整えています。
青果物販売のイメージキャラクターに「釣りキチ三平」を起用しているJA秋田ふるさとを訪ねました。

原産地表示で「国産」がわかりやすく

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「冷凍保存もできますが、新鮮なうちの味わいが一番」と生産者の藤原信博さん
 しいたけの栽培は、コナラやクヌギなどの丸太(ほだ木)にしいたけの種菌を植える「原木栽培」と、おが粉や木材のチップを固めた培地に植える「菌床栽培」の2種類の栽培方法があり、国内で生産される生しいたけの約9割が「菌床栽培」されています(農水省統計より)。
「JAグループ秋田では、日本で伐採されたコナラ、ミズ、ナラなどの木材を使った菌床と原木でしいたけを栽培しています」と、JA秋田ふるさと営農経済部園芸課の鈴木琢磨さん。
「JA秋田ふるさと管内の菌床しいたけは県内約7割のシェアがあります。もともと菌床づくりから収穫まで全てを管内で行っており、品質を統一してお届けできるよう取り組んでいます。JA秋田ふるさと産の違いを知っていただけると嬉しいです」。
 目印は、菌床の原料が国産であることを示す「どんぐりマーク(栽培原料原産地商標)」と「原産地:秋田県」と表示されたJA秋田ふるさとオリジナルの「釣りキチ三平」の描かれたシールです。
 しいたけは、種菌を植えつけた菌床が製造された場所と、育てて収穫された場所が異なる場合があります。近年、海外、主に中国で製造された安価な菌床を輸入して、日本国内で育てて収穫したしいたけの流通量が増えてきました。これまで「原産地」には「収穫地」が表示されており、輸入した菌床でも、国内で製造した菌床でも日本国内で収穫されたものは「国産」となり、区別が難しい状態にありました。そのため、消費者庁が原産地表示のルールを見直し、「種菌を植えつけた場所(植菌地)」を「原産地」とすることとし、2022年10月から適正な表示が義務付けられました。

肉厚の「国産しいたけ」を安定して出荷

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成長を見ながら、ひとつずつ収穫します
「培地は秋田県産のコナラのチップとおが粉に、米ぬか、フスマ、でん粉などの栄養分を混ぜたものです。穀類の栄養でしいたけに旨みがしっかり出ます」と話す、JA秋田ふるさときのこ部会役員兼共選運営委員長の藤原信博さんは、菌床しいたけ栽培歴26年。9月~5月の秋冬シーズン用のハウスと4~10月の春夏用ハウス合わせて9棟でしいたけを栽培し、周年出荷しています。
 培地は栽培用の袋に詰めて、高温、高圧の釜で蒸気殺菌の後、種菌を植えつけて4~5ヵ月かけて、菌床全体が菌糸層に覆われるように培養します。ハウス1棟につき約9000床(袋)を管理。水と温度変化を与えながら成長を促し、菌床の状態を整えるまで1ヵ月弱かかります。
「約25℃の温度管理で、しいたけはおが粉を分解しながら菌床に菌を張り巡らし、日中と夜の温度差をつけて呼吸させることで子実体(しじつたい・みなさんが食べている部分)を作ります。本来のしいたけの季節は秋。生育環境を整えて、徐々に秋に近づけていきます」と藤原さん。
 環境が整うと4~5日で表面にしいたけの芽が出てきて、さらに4~5日かけて大きく育ちます。

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肉厚のしいたけは傘の裏側の膜がしっかり巻いています
「肉厚で高品質なしいたけを育てるには、水、温度、空気の動き、打撃や水を当てるといった適度なストレス全てのバランスが重要です。水はたくさん与えますが、きのこに水気が多くなると傷みやすく色が悪くなります。菌床には水分をキープさせ、きのこの表面は乾かしておく工夫が必要です」。
 収穫は1日約6000~7000個。収穫の合間に、成長段階に応じて菌床を移動させながら年間の作業も同時進行します。

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石づきなどを調製しながら丁寧にトレイに並べていきます
 収穫したしいたけはJA全農あきた県南園芸センターへ。生産者ごとに出荷されたコンテナをバーコードで管理し、しいたけ1個1個をセンサーに通してAIが瞬時に「大きさ」「厚み」「形状」を読み取って規格、等級を選別。さらに目視で確認しながら手作業で調製してトレイに詰め、箱詰めして出荷します。
「そのまま焼いて食べると、厚みのある食感とうま味を堪能できます。国産のしいたけを1年中味わって欲しい」と藤原さん。
 ぜひ店頭で、「釣りキチ三平」が目印のJA秋田ふるさと産菌床しいたけを探してみてください。

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「釣りキチ三平」の シールが目印

●JA秋田ふるさと
【菌床生しいたけ】生産概要
生産者数:89名
出荷量:約2035トン
主な出荷先:関東、県内など

「品質の高い国産のしいたけを1年を通してお届けしています」とJA秋田ふるさと営農経済部園芸課の鈴木琢磨さん

2022.10更新

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