名乗れるのは2L以上の大玉のみ
山形県では「佐藤錦」「紅秀峰」に続く第三のブランドとするべく、果樹で初となる生産者登録制度を導入。2018年から苗木を配布して栽培を始め、2023年から本格出荷となりました。
「JAさがえ西村山は山形県内でも“紅秀峰”の産地として技術力に定評があるので、大玉の“やまがた紅王”も今後広げていきたいです。中生種の「佐藤錦」と晩生種の「紅秀峰」の間、6月下旬から7月上旬に収穫できる「やまがた紅王」は中継ぎ役としても期待されています」と、伊藤さん。
「佐藤錦」と比べて果肉がしっかりしていて輸送しやすいことから輸出を視野に入れ、中国や韓国などアジア各国でも商標登録を出願しています。
収穫量増大へ向け栽培研究
「3年目辺りから大きな実がつくようになってきました。まだ若木で結実が少なめですが、10年を経て成木となれば、収穫量が見込めるようになります。それまでに樹形を作業効率のよいY字仕立てにするなど栽培環境を確立させたいですね」と、今後の見通しを話す土田さん。芽かきのバランスや結実性を高める方法、着色具合など、質の高いさくらんぼが収穫できるようJAでの勉強会にも積極的に参加しています。
収穫は、実がパリッとおいしい状態で出荷するため短期決戦。「朝の5時から8時まで摘み取り、作業場で10時頃まで一粒一粒大きさや色、形などを選別し、箱詰めして集出荷場に16時までに出荷します。ピーク時は19時までの夜間出荷をすることもあります」。


収穫が終わると来年に向けての準備です。夏は草取りやダニなどの防除、木の剪定など、春は遅霜で蕾を枯死させないための作業や授粉、実が大きく膨らむ時期には水やりや雨除けの設置と、まさに“子育てと同じ”ように手間ひまをかけて育てます。そこにやりがいを感じると話す土田さん。
「栽培は試行錯誤の連続です。でも手をかければかけた分、形になることに面白さを感じます。地域に同じ年代の若手生産者がいて情報交換できる点も心強いです」。
山形県期待の新品種「やまがた紅王」。2022年のプレデビュー販売当日はJAの直売所に開店前から長蛇の列ができるなど、期待の高さがうかがえました。食べ応えのある大きさ、甘味と酸味のバランスなど、一度試しておいしさを実感してください。
(取材:2022年6月下旬)
●山形県下(JAさがえ西村山含む)
【さくらんぼ(やまがた紅王)】生産概要
生産者:約2706名
栽培面積:約150ヘクタール
出荷量:約20トン(2023年出荷見込み)
主な出荷先:関東、関西など
