促成など作型を駆使して長期出荷
「1971年、出荷直前のきゅうりにひょうが降り、大きな被害が出ました。復旧の取り組みとして水田を転作してビニールハウスを設営し、きゅうりの施設栽培が始まりました」と、JAみやぎ登米営農部園芸課の阿部匡之佑さん。
きゅうりは生育時に大量の水を必要としますが、その点水田は水の確保がしやすく、栽培が広がりました。今ではハウスでの促成・抑制栽培も行い、3月下旬~12月上旬までの長期出荷を行っています。
「定植から約1ヵ月で収穫でき、促成栽培は2月に定植して3~6月に収穫、夏秋きゅうりは5月に定植して6~10月に収穫、抑制栽培は8月に定植して9~12月に収穫します。春や秋は加温することが多いですが、中には夏を過ぎて11月まで無加温で収穫する生産者もいます」と阿部さん。生産量拡大と高品質生産を目指し、栽培講習会や生産者同士で畑を回って生育状況を確認する現地検討会、他産地の視察、市場への研修など、さまざまな取り組みを行っています。
「きゅうり専用の共同選果場では2016年に新しい機械を導入しました。長さや太さが異なる6種類のサイズの選別や梱包などの自動化を進めており、1日最大25トン(5kg箱で約5000箱)を出荷できます。この選果場があることで、生産者は選別などの出荷・調製作業に時間を取られずに栽培に専念して、収量を増やせます。今後は出荷量をもっと増やし、販売先を全国へと広げていきたいです」と、阿部さんは意気込みます。
※ 安定出荷のため、消費量の多い14品目の野菜を国が定め、毎年作る産地として指定すること
ストレスのない環境を整えて成長を促す
ハウスに案内してもらうと、背丈約2mに成長したきゅうりの畝が10列ずらりと並び、壮観です。
「主枝から子枝、孫枝と伸ばしながら、1株から100本以上の実を収穫します。長い期間、まっすぐな実を採り続けるためには、追肥や防除など、こまめな生育管理が大切です」と、久保部会長。葉の色や広がり具合の確認は欠かせません。通気が悪いと病気になりやすいので、密集している所の葉を摘んで風通しを良くするとともに、日光が中までよく当たるようにします。さらに連作障害対策として、夏は水を張って土の中に残った余分な肥料を洗い流し、冬に堆肥などを入れる丁寧な土づくりも欠かせないと話します。
「夕採りは実に昼間の熱がこもっているので、収穫直後から予冷をかけて鮮度を保持します」と、久保部会長。収量と品質を上げるため、温度、湿度、日射量などを計測できる環境制御システムを導入しました。良い状態の環境を数値化することで、生産者同士のノウハウの共有もしやすくなり、産地全体がレベルアップできると未来を見据えます。
(取材:2023年4月初旬)
●JAみやぎ登米
【きゅうり】生産概要
生産者:約122名
栽培面積:約37ヘクタール
出荷量:約3080トン(2022年実績)
主な出荷先:県内、関東

2024.04更新