【茨城県鉾田ほこた市】

ジューシーな果肉と豊かな香りメロン

撮影◎鎌田啓之介

芳醇な香りと濃厚な甘みが魅力のメロン。きゅうりと同じウリ科の野菜で、網目のあるネット系、網目のないノーネット系に分かれ、さらに果肉の色によって青肉、赤肉、白肉の3種類に分類されます。
茨城県は1998年から25年連続でメロンの生産量が日本一。
中でもJA茨城旭村は、光センサーによる選果で高品質なメロンを安定的に出荷しています。
トレーサビリティを確立し、生産者一人ひとりが品質向上に力を注いでいる産地です。

map

味の決め手は温度・湿度・水管理

1
「海風による昼夜の寒暖差によって糖度がしっかりのった自慢のメロンです」と、JA茨城旭村メロン部会の江沼 俊 部会長
 茨城県の東、鹿島灘沿いにある鉾田市旭地区。温暖な気候とミネラル豊富な火山灰土壌が広がり、トマト、さつまいも、水菜など農業が盛んな地域です。数戸の農家がプリンスメロンの栽培を始めたのは1963年頃のこと。
「メロンは北アフリカが原産のため、乾燥した土地を好みます。この辺りは砂地で水はけがよく、昼夜の寒暖差もあり栽培に適した環境でした。今では、春メロンとしてオトメメロン、アンデスメロン、クインシーメロン、エルソルメロンの4品種を栽培。『旭メロン』としてブランド化しています」とJA茨城旭村営農販売課の酒井 巧さん。4月上旬から出荷が始まるオトメを皮切りに、6月末まで4品種を順次出荷しています。
 メロン部会の江沼 俊 部会長のハウスを訪ねると、クインシーの収穫が行われていました。
「クインシーは栽培期間が約5ヵ月のため、12月下旬に定植します。2月下旬にミツバチによる受粉を行い、受粉から約60日後が収穫の目安です。定植から受粉までの温度管理、受粉から収穫までの温度・湿度・水管理がメロンの味の決め手となります。ハウス内にトンネルを作って保温し、湿度調整のために毎日換気を行い、大玉を作るために葉を大きく茂らせるなど、細かく管理をして品質を高めます」と、江沼部会長。約1.5ヘクタールの畑にアンデス、クインシー、エルソルと、メロンのほかにトマトを栽培し、家族と研修生を含めた5人で管理しています。

2
「1株につき収穫するメロンは4個。蔓を2本伸ばして1つの蔓に2個のメロンを実らせます。うちの場合は、花の様子を観察し、同じ日に咲く花の中から大玉になりそうな良い花をあらかじめ3~4個に絞り込んで受粉させます」とのこと。受粉時期をそろえることで、ハウス1棟分を同じ日に収穫できるので、安定的な収量の確保が可能になります。

3

光センサー選果と生産履歴で品質保証

 受粉日から積算し収穫適期になると、事前にJAの職員がハウスを訪問して糖度をチェック。基準の糖度に達していたら収穫開始です。
「最盛期の収穫作業は大変ですが、『これはいい!』と自信をもって言えるメロンがたくさん取れると、栽培時の苦労なんて吹き飛んでしまいます。収穫は一番楽しい作業です」と、江沼部会長は笑顔を見せてくれました。

4
皮に入ったひびを分泌液が塞ぎ、美しい網目(ネット)を作ります。ネットが細かく均等なほど実がバランス良く成長して高品質です
 JAの青果物管理センターに集められたメロンは、専門スタッフがキズやネット密度などを目視で検査。光センサー選果機で糖度や熟度を測定し、さらに外観センサーで網目(ネット)をチェックして選別します。
「サイズはS〜5Lまで8ランクありますが、出荷の中心は2~3Lの大玉です。選別後のメロンには、収穫日などの個体情報にアクセスできる二次元コード付きシールが貼られます。アクセスすると、生産者紹介・等級・糖度・栽培履歴・収穫日などが分かります。光センサー選果によって12度以上の糖度を保証し、市場からの信頼が高まりました」と、胸を張る酒井さん。春メロンのうち、糖度18度以上で外観の美しいものはプレミアムメロンとして販売します。最盛期の出荷量は1日に約3万ケース(約12~15万個)にも上ります。

5
【右】大きさと、糖度・熟度の2段階でチェックする光センサー検査
6
【左】生産者情報などが分かる二次元コード付きシール
【右】最盛期には箱詰めされたメロンがずらりと並びます
 オトメはすっきりとした甘み、アンデスは際立つ香りと軽やかな甘み、クインシーは緻密な果肉と強い甘み、エルソルは豊かな甘みと爽やかな後味と、品種ごとに異なる味わいが楽しめます。たくさんのメロンが出回る季節、食べ比べるのもいいですね。メロンは常温で追熟させます。食べ頃は二次元コードの収穫日を目安に判断してください。冷やし過ぎると甘みを感じにくくなるので、食べる2時間ほど前に冷蔵庫に入れましょう。果汁たっぷりでとろけるおいしさをぜひ味わってください。

(取材:2023年5月中旬)

●JA茨城旭村
【メロン】生産概要
生産者:約147名
栽培面積:約127ヘクタール
出荷量:約105万トン(2023年実績)
主な出荷先:関東、京浜、関西、長野

「光センサー選果で保証された甘いメロンをたくさん食べてもらいたいです」
JA茨城旭村の酒井 巧さん

2024.05更新

閲覧数ランキング