【栃木県栃木市】

肉厚で香りのよいスタミナ野菜 夏にら

にらはユリ科ネギ属の多年草で、土の中の鱗片(りんぺん・球根)に養分を蓄えます。
生命力が強く、刈り取ってもまた葉が伸びて何度も収穫できるのが特長です。
餃子の街、宇都宮のある栃木県はにらの作付面積が全国1位。
秋から春に収穫する冬にらだけでなく、夏から秋に収穫する夏にらの栽培にも力を入れています。肉厚で幅広の夏にらは食べ応え抜群。
県内有数の産地JAしもつけを訪ねました。

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1年間株を育て翌年から収穫

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「スタミナ抜群のにらをもっとたくさんの方に食べていただき、夏の暑さを元気に乗り切ってもらいたいです」と、JAしもつけニラ部会の野尻真悟さん
 JAしもつけのある栃木市周辺では、1965年頃から冬場の日照時間の長さを生かして、にらの栽培が始まりました。比較的軽作業が多く新規参入しやすかったため、生産者数が増えて一大産地に成長したといいます。
「今では周年どり、冬どり、夏どりと作型を組み合わせて一年中収穫しており、年間約24万箱(4kg入り)を出荷しています。特に5~10月に出荷する夏にらは、葉に厚みがあって幅も広く、迫力がありますね」と話すのは、JAしもつけ営農経済部園芸振興課の高田尚彦係長。
 強い生命力が自慢のにら。一度収穫しても、夏は約20日、冬は約30日で再び収穫できるため、周年どりでは2年間で7〜8回の収穫が一般的です。一方、夏にらは、定植した1年目は収穫せず、2年目の春から秋にかけて4回収穫します。長期間じっくり株を養成することで、養分が蓄えられ、翌年の春に再び葉が伸びる際に幅広で肉厚なにらになります。

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切り口から水が滴るほどみずみずしい!

「3月に種まきをして、6月に定植してから約1年間、収穫をしないで株を育てます。夏に花が咲きますが、養分が球根にいくよう花茎を刈り取ります。晩秋に気温が下がると葉が枯れ、球根の状態で越冬するので、翌年4〜5月頃に新たに伸びてきた葉を収穫します」と、JAしもつけニラ部会の野尻真悟さんが説明してくれました。花が咲く6月は株養成をして収穫しないため、7月末に再び収穫する前には、硬くなった葉を刈り取り(捨て刈り)します。10月中旬までに3回収穫した後、新しい株に植え替えます。
「うちには8棟のビニールハウスがありますが、4棟を1年目、残り4棟を2年目と分けて栽培することで、収穫を途切れさせることなく安定的な収量を確保しています」と、野尻さんは話します。

手作業によるきめ細かな選別・調製

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30cm以上の長さを目安棒で確認し、根元から刈り取ります

 田んぼの間に点在するビニールハウスの中を覗くと、収穫間近のにらが元気良く伸びています。13年前に両親の後を継いだ野尻さん。にら栽培はこまめな生育管理がポイントと話します。
「まずは土づくり。にらは湿度に弱いので、水はけが良くなるようV字型に耕して元肥をしっかり入れ、連作障害の少ない土壌をつくります。日差しが強いときには葉が焼けないよう遮光ネットをかけたり、こまめな換気で湿度の調節を行います。冬は寒気にあてて根を丈夫にすることも大切です。手を掛けるとおいしいにらになります」。
 収穫は、早朝5時半頃から行います。「一番短い出荷サイズは30cmなので、目安の棒を使って長さを確認しながら刈り取ります」。1回の収穫で、70ケース(約280~300kg)ほどになるといいます。

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刈り取ったにらは、自宅の作業場で着帽・手袋をして100gずつに束ねます
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10束ずつ袋詰め後、空気を抜いて箱詰め

「選別・調製は手作業なので大変です。葉先の傷んだものや折れた葉を丁寧に取り除いて計量し、100gずつテープで束ね、それを10束まとめて袋に入れ、鮮度保持のために機械で空気を少し抜いてから4袋ずつ箱に詰めます」と、野尻さん。
 葉の長さと幅で3等級に分け、箱詰めしたにらは、集出荷場で品質検査後、予冷庫で保管し出荷されます。

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集出荷場ではスタッフが一袋ずつ長さや葉幅を確認して規格分けします

 野尻さんおすすめの食べ方はお浸し。「さっと湯がいてちりめんと和え、ごま油としょう油をたらすとおいしい。にらの甘さをしっかり感じられます。みじん切りをめんつゆに漬け込んだたまり漬けは、冷奴や揚げ物などの万能タレとして日持ちもするので便利です」。
 にらに含まれるアリシンは、ビタミンB1の吸収率を高めるため、にらと豚肉の炒め物は夏バテ解消にピッタリ。香り豊かで栄養豊富なにらをたくさん食べて、元気に夏を乗り切りましょう。

(取材:2023年)

●JAしもつけ
【にら】生産概要
生産者:約123名
栽培面積:約32.7ヘクタール
出荷量:約954.2トン(2022年実績)
主な出荷先:東京、神奈川、東北、県内

「土づくりなどを工夫し、より高品質なにらづくりに産地一丸となって取り組んでいきたいです」と、JAしもつけの高田尚彦係長

2024.06更新

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