1年間株を育て翌年から収穫
JAしもつけのある栃木市周辺では、1965年頃から冬場の日照時間の長さを生かして、にらの栽培が始まりました。比較的軽作業が多く新規参入しやすかったため、生産者数が増えて一大産地に成長したといいます。
「今では周年どり、冬どり、夏どりと作型を組み合わせて一年中収穫しており、年間約24万箱(4kg入り)を出荷しています。特に5~10月に出荷する夏にらは、葉に厚みがあって幅も広く、迫力がありますね」と話すのは、JAしもつけ営農経済部園芸振興課の高田尚彦係長。
強い生命力が自慢のにら。一度収穫しても、夏は約20日、冬は約30日で再び収穫できるため、周年どりでは2年間で7〜8回の収穫が一般的です。一方、夏にらは、定植した1年目は収穫せず、2年目の春から秋にかけて4回収穫します。長期間じっくり株を養成することで、養分が蓄えられ、翌年の春に再び葉が伸びる際に幅広で肉厚なにらになります。
「3月に種まきをして、6月に定植してから約1年間、収穫をしないで株を育てます。夏に花が咲きますが、養分が球根にいくよう花茎を刈り取ります。晩秋に気温が下がると葉が枯れ、球根の状態で越冬するので、翌年4〜5月頃に新たに伸びてきた葉を収穫します」と、JAしもつけニラ部会の野尻真悟さんが説明してくれました。花が咲く6月は株養成をして収穫しないため、7月末に再び収穫する前には、硬くなった葉を刈り取り(捨て刈り)します。10月中旬までに3回収穫した後、新しい株に植え替えます。
「うちには8棟のビニールハウスがありますが、4棟を1年目、残り4棟を2年目と分けて栽培することで、収穫を途切れさせることなく安定的な収量を確保しています」と、野尻さんは話します。
手作業によるきめ細かな選別・調製
田んぼの間に点在するビニールハウスの中を覗くと、収穫間近のにらが元気良く伸びています。13年前に両親の後を継いだ野尻さん。にら栽培はこまめな生育管理がポイントと話します。
「まずは土づくり。にらは湿度に弱いので、水はけが良くなるようV字型に耕して元肥をしっかり入れ、連作障害の少ない土壌をつくります。日差しが強いときには葉が焼けないよう遮光ネットをかけたり、こまめな換気で湿度の調節を行います。冬は寒気にあてて根を丈夫にすることも大切です。手を掛けるとおいしいにらになります」。
収穫は、早朝5時半頃から行います。「一番短い出荷サイズは30cmなので、目安の棒を使って長さを確認しながら刈り取ります」。1回の収穫で、70ケース(約280~300kg)ほどになるといいます。
「選別・調製は手作業なので大変です。葉先の傷んだものや折れた葉を丁寧に取り除いて計量し、100gずつテープで束ね、それを10束まとめて袋に入れ、鮮度保持のために機械で空気を少し抜いてから4袋ずつ箱に詰めます」と、野尻さん。
葉の長さと幅で3等級に分け、箱詰めしたにらは、集出荷場で品質検査後、予冷庫で保管し出荷されます。
野尻さんおすすめの食べ方はお浸し。「さっと湯がいてちりめんと和え、ごま油としょう油をたらすとおいしい。にらの甘さをしっかり感じられます。みじん切りをめんつゆに漬け込んだたまり漬けは、冷奴や揚げ物などの万能タレとして日持ちもするので便利です」。
にらに含まれるアリシンは、ビタミンB1の吸収率を高めるため、にらと豚肉の炒め物は夏バテ解消にピッタリ。香り豊かで栄養豊富なにらをたくさん食べて、元気に夏を乗り切りましょう。
(取材:2023年)
●JAしもつけ
【にら】生産概要
生産者:約123名
栽培面積:約32.7ヘクタール
出荷量:約954.2トン(2022年実績)
主な出荷先:東京、神奈川、東北、県内