【長野県中野市】

濃い甘みとさわやかな香り クイーンルージュ ®

撮影◎磯野博正 ※長野県登録商標

長野県は、全国有数のぶどう生産量を誇ります。
シャインマスカットや巨峰、ピオーネ、ナガノパープルなど、バラエティに富んだ品種を栽培しています。
そんな中、2021年に長野県オリジナルの赤ぶどう「クイーンルージュ ®」が期待の新品種としてデビューしました。長野県が誇る人気の三品種「ぶどう三姉妹 ®」 ※にも名を連ねます。
主要産地のひとつJA中野市を訪ねました。
※JA全農登録商標

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長野県オリジナル品種の期待の赤ぶどう

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「手をかけて育てたぶどうをぜひ味わってください」と話すJA中野市ぶどう部会の下田貴之部会長
 クイーンルージュは、「シャインマスカット」と細長く赤い粒の「ユニコーン」を交配し、長野県で育成された品種です。糖度20度以上で種がなく、薄い果皮は滑らかで皮ごと食べられます。マスカットのさわやかな香りがあり、甘いのも特長。クイーンルージュの名前は“女王級の甘さ”と“口紅のような赤”を意味します。
「JA中野市で栽培しているぶどうの約7割がシャインマスカット、2割強が種なし巨峰、残りがナガノパープルとクイーンルージュなどです。赤ぶどうは栽培が難しく、種なし・皮ごと食べられる品種は全国でも数えるほどしかありません。日照不足だと色がつかず、日に当たりすぎると黒っぽくなるなど着色が安定せず、これまで定着していませんでした。クイーンルージュの登場で、生産者の期待や生産意欲が高まり、県を挙げて栽培普及に取り組んでいます。導入から5年が経ち、品質も安定し自信をもっておすすめできます」と話す、JA中野市営農部園芸課指導販売係の清水達哉さん。
 2018年にクイーンルージュを試作導入した際には、JA中野市ぶどう部会員約500人のうち約300人の生産者が名乗りを上げ、栽培を始めました。
「最初は試行錯誤の連続でした。非常に甘いという特長はあるけど、香りが伴わなかったり果皮が破れてしまったり。でも、ようやく味が安定し、栽培面積も年々増えているので、この品種の産地化に向けて頑張りたい」と、JA中野市ぶどう部会部会長の下田貴之さん。ぶどうは7~15年で成木となるため、まだ栽培年月が浅く希少なクイーンルージュも、これから徐々に生産量が増え、将来的には安定出荷が期待されています。

繊細なぶどうを目をかけ手をかけて

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色づき具合を確かめて、丁寧に収穫します

 ぶどうの生産は、早出しのハウス栽培と露地栽培で行われています。訪れたハウスでは、クイーンルージュが鈴なりで、圧巻の光景です。
「ぶどうはデリケートで、日焼けや雨で果皮が破けたりするのを防ぐために、一房ごとに袋がけをし、さらにポリエチレン製の傘をかけて栽培します。全体の色づき具合と出荷状況を見極めながら、袋と傘を順次外して収穫していきます」と、JA中野市の清水さん。

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一面に傘かけされたクイーンルージュが広がります

 ぶどう栽培は年間を通して作業工程が多く、とても手がかかります。実がついてからは、一房の長さを整える房切り、種をなくして果粒の肥大を促すジベレリン※処理、肩の部分と先端を決めて房づくり、摘粒(てきりゅう)、そして袋と傘かけ。他にも、春先には芽かきや枝の誘引、盛夏には摘心(芯止め)、冬には剪定などの作業があります。
「日が当たると、ぶどうは色鮮やかになって糖度も上がるので、収穫近くなったら葉がかからないように枝管理が特に大切です」と、下田部会長。手間ひまを惜しまない丁寧な手作業が、おいしいぶどうを作っているのです。
「一番苦労するのは、6月後半に行う摘粒作業ですね。一房30~35粒になるよう、内側に入り込んだ粒を間引きます。外に向いた粒を残してスペースを作ってやると、大きな丸い粒に仕上がります」と、下田部会長は話します。
 収穫は毎朝6~8時頃に行い、作業場に運んで選別と箱詰め・パック詰め作業をし、JAのぶどう選果場に運びます。JA中野市では、一房の重さで2〜4Lの規格に選別して出荷しています。
※ 植物性ホルモンの一種

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【左】5kg箱に詰めたぶどうを、選果場で最終チェック 【右】シャインマスカットや巨峰などとともに、順番に出荷されます

 クイーンルージュの本格的な出荷(露地)は9月下旬~10月末までです。長野県自慢の新品種のため、苗木の購入・栽培は登録制とし、「クイーンルージュ」の名前を商標登録して、県内でのみ栽培を許可して保護しています。

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粒の表面についた白い粉(ブルーム)が、新鮮な証拠
 また、長野県で人気の3品種、黒い「ナガノパープル」、緑の「シャインマスカット」、赤の「クイーンルージュ」を甘い・種なし・皮ごと食べられる「ぶどう三姉妹」と銘打ち、シリーズ化しました。3品種が出そろう9月下旬に、果実専門店やJAタウンで販売しています。ぜひお楽しみください。

(取材:2023年9月中旬)

●JA中野市
【ぶどう】生産概要
生産者:約560人
栽培面積:約350ha
(うちクイーンルージュ13ha)
出荷量:約3700t
(うちクイーンルージュ100t)
主な出荷先:関西、関東、中京
購入はこちら▼

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「びっくりするような甘さのクイーンルージュをたくさんの人に広めたい」とJA中野市営農部園芸課の清水達哉さん

2024.09更新

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