【富山県射水(いみず)市】

甘味とコクの希少な黒大豆えだまめ 富山ブラック

文◎編集部 撮影◎磯野博正

豊富な水と肥沃な扇状地に恵まれ、稲作中心の農業が営まれてきた富山県の射水平野で今、園芸作物の導入が進んでいます。
県が2010年から大規模園芸産地を目指す「1億円産地づくり」をスタート、その一環でJAいみず野管内では「えだまめ」の栽培が増えています。
主力品種は黒大豆の「たんくろう」です。
他県産と差別化を図るため「富山ブラック」のブランド名で出荷し、年々注目度が高まっています。

「たんくろう」を主力品種に導入

「大型機械の導入で生産拡大ができました」と、ファームふたくち大門本江班の稲垣潔さん
  夏のつまみに欠かせないえだまめは、おなじみの緑豆種をはじめ、茶豆種、黒豆種などがあります。黒豆種は産毛が茶色で莢が少し黒っぽく、食べると強い甘味と凝縮されたコクがあるのが特長です。
「管内では2005年からえだまめ栽培に取り組んでいます。流通量の少ない黒大豆の『たんくろう』を主力品種に導入し、販売高1億円を目指しています。大豆栽培の経験のある生産者が多いので栽培はスムーズでしたが、収穫後は鮮度が落ちやすく急激な温度変化に弱いため、畑から販売店舗までの徹底した温度管理が欠かせません」と、JAいみず野営農経済部営農指導課の野岸秀旭課長代理。JAでは集荷した枝豆を急速冷却させる保冷庫や選果場を2018年に整備し、集荷から出荷まで低温を保ち鮮度維持ができるようにしています。さらに県行政や全農と連携して、生産者には枝豆専用の収穫機や洗浄機などの省力機械を整備し、作付けの拡大を後押ししています。
 支援は着実に作付け面積を増やし、農事組合法人ファームふたくちでは2015年に約30アールからえだまめ栽培を始め、2020年は約4ヘクタール、2021年はさらに1ヘクタール増やしました。6つの集落で構成する農事組合法人で水稲、大豆、大麦、えだまめを約150ヘクタール栽培する、ファームふたくち大門本江班の稲垣潔さんは「大型機械を共同利用することで作業時間や労力が軽減できるので、生産拡大ができました」といいます。

徹底した温度管理で鮮度保持

気温が低いうちに大型機械で一気に収穫して品質保持

 ファームふたくちでは、夜が明けきらない午前3時から6時までが収穫作業時間です。枝から莢をはずす脱莢(だっきょう)機を装備したトラクターで、グングン収穫します。カゴいっぱいに刈り取られたえだまめは、近くの作業場に運ばれ、水洗いしてからコンテナでJAの選果場に出荷されます。
「気温が低いうちに収穫して温度変化による品質劣化を防ぎます。大型機械で一気に収穫できるようになって本当に助かっています。以前は一株ごと手作業の刈り取りで大変でした」と笑う、稲垣さん。3月下旬から6日間隔で時期をずらして種まきをし、7月上旬から9月にかけて収穫が続きます。JAのえだまめ部会では莢の厚さを8~9ミリで収穫するなどの出荷基準を設け、品質の統一と生産者全体のレベルアップに努めています。

作業場に運んで水洗い、選別してから選果場に出荷します

 JAの選果場に出荷されたえだまめは、真空冷却されたあと、予冷庫で保管し、光選別機と人の目で厳しく選別。徹底した温度管理のもと出荷されます。
「消費者の皆さんから信頼して選んでいただく産地になるために、栽培技術だけではなく、安全・安心に生産が行われたことを示すGAPへの取組みが不可欠と考え、2018年にえだまめ部会として県内初のJGAP(※)団体認証を取得しました」と、JAいみず野の野岸課長代理。生産者・JA・指導員・関係機関が一体となって取り組んだ結果です。さらに、この認証はあくまでも通過点で、今後も継続してより良い農場運営を目指したいと、意気込みをみせています。
(※)JGAP:Japan Good Agricultural Practiceの略。農水省が推奨する農業生産工程管理のひとつ。食の安全や環境保全等に取組む農場に与えられる認証。

選果場では徹底した温度管理のもと機械と人の目で厳しく選別、出荷されます

 栄養豊富で夏バテ防止や疲労回復にも効果的なえだまめ。ゆでるだけで簡単に楽しめ、素材そのものの味わいを存分に味わえる食材です。希少価値の高いJAいみず野の「富山ブラック」をぜひ一度食べて、濃厚な味わいを堪能してください。”えだまめは鮮度が命”買ってきたらすぐに調理することをおすすめします。食べきれないときは、硬めにゆでて保存袋などに入れて冷凍保存も可能です。えだまめごはんやポタージュなどでも楽しめます。
(撮影:2020年8月中旬)

●JAいみず野
【富山ブラック】生産概要
生産者:22組合法人
栽培面積:約35ヘクタール
出荷量:約71トン(2020年実績)
主な出荷先:県内、関東、中京など

「味には絶対の自信がありますので、ぜひ食べてみてください」と、JAいみず野の野岸秀旭課長代理

2021.08更新

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