肥料の3要素である、窒素・リン・カリウムの特徴や作物への働きなどを教えてください

指導◎岡本 保(JA全農 肥料研究室技術主管)イラスト◎かとうともこ

「わくわく菜園づくり」でおなじみの菜園田ファミリー。東京都内のマンションに住んでいた大地、若菜さん夫婦は美味しいものが大好きで、休日は二人で食べ歩きをしていました。子どもができたのをきっかけに素材の野菜作りから楽しもうと、東京都郊外の庭付き一戸建てに引っ越しました。娘のナナちゃんと息子のアグリくんも畑でのお手伝いが大好きです。
ナナちゃんは虫がちょっと苦手、アグリくんは何でも手づかみするいたずらっ子ですが、種まきや水やりがとても上手です。
これから家庭菜園を始めようというビギナーさん必見!野菜作りの基本のきを紹介します。マスターしたら、本誌の「わくわく菜園づくり」を参考にチャレンジしてね。

菜園田ファミリー
菜園田ファミリープロフィール
  • お父さん:大地(ダイチ)35歳
    お母さん:若菜(ワカナ)33歳
  • 長女:菜菜(ナナ)8歳
    長男:阿久利(アグリ)4歳
  • ペット犬:ユズ(♂)
    ペット猫:アズキ(♀)

Q肥料の3要素である、窒素・リン・カリウムの特徴や作物への働きなどを教えてください

A 肥料の3要素の説明の前に、植物の「必須元素」について説明させてください。必須元素とは、農作物を含む全ての植物が、生育を完結して次世代を残すために必要不可欠で、他の元素*では代替できない元素のことをいいます。現在、17種類の元素が植物の必須元素として知られています。これらのうち、炭素、水素、酸素、窒素、リン、カリウム、カルシウム、マグネシウム、硫黄の9元素は、植物が多量に必要とするため多量要素といいます。これに対して、ホウ素、マンガン、鉄、銅、亜鉛、モリブデン、塩素、ニッケルの8元素は、必須元素ではあっても植物の必要とする量が比較的少ないので、微量要素と呼んでいます。
*元素とは物質を構成する最も基本的な成分で、地球上では百種類以上が知られています。

 上記9種類の多量要素のうち、窒素、リン、カリウムを「肥料の3要素」と呼んでいます。これらは肥料として水田や畑の土壌に施用したときに、作物の収量や品質を向上させる効果が、とても大きいことが特徴です。肥料を施用していない土壌にも、天然由来の窒素、リン、カリウムは含まれています。しかし、その存在量は作物を順調に生育させて、収穫物を得るために必要なレベルに比べると非常に少なく、「肥料」としてこれらを人が施用していない土壌では、通常これらの3要素は「不足」の状態です。このため、窒素、リン、カリウムは、肥料として施用したときの効果が特に大きく、他の6種類の多量要素とは特に区別して、「肥料の3要素」と呼んでいます。次に、3要素の作物への働きについて説明します。

 窒素: 窒素はタンパク質を作る主要な材料です。タンパク質は植物の体(葉、茎、花、果実など全て)の生長には欠かせません。また、植物体内の様々な化学反応を促進する酵素もタンパク質です。従って、3要素の中でも特に重要で、不足すると生長がストップします。しかし、過剰になると茎や葉ばかりが生長を続け、花が咲かなくなったり、イモが太らなくなったりする、いわゆる「蔓ボケ」の状態になります(植物が「今」を楽しむことに興じ過ぎて、次世代に資産を残すことを怠るからでしょうか??)。

 リン: リンはDNAを作る主要な材料です。また、糖や脂肪と結合して、茎の枝分かれ、根の伸長、開花・結実を促進する効果があります(花咲か爺さんのまいたポチの骨は、まさにリン酸肥料なので、枯れ木に花が咲いたのかも??)。不足すると窒素不足の場合と同様に生長がストップします。リンは特に寒い時に不足しやすいです。リンが過剰になると植物体内で他の栄養(特に鉄や亜鉛)の働きを邪魔して、葉が白変するなどの症状が現れます。

 カリウム: カリウムは植物体内の水分調整を行っています。人間の場合、ナトリウム(塩分)が体内水分調整を行うのに似ています。また、植物の体を強くする効果があり、不足すると病気にかかりやすくなります。過剰に存在しても他の要素に比べると症状は現れにくいですが、土の中にカリウムが必要以上に存在すると、他の栄養(とくにカルシウムやマグネシウム)の根からの吸収を邪魔して、カルシウム不足の症状(葉縁や果実先端の褐変など)や、マグネシウム不足の症状(葉の黄化など)が現れることがあります。

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2022.03更新

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