有機肥料が土になじむまでにどのくらい時間がかかりますか。気温は影響しますか。
なたね油かすや魚かすなどの有機肥料を土に混ぜ込むと、肥料中のたんぱく質や糖類などの有機物が、土壌中の微生物に食べられ消化されて、アンモニアや硝酸などの無機物に変化します。これを無機化といいます。有機肥料の無機化は、土に混ぜ込んで数日後からスタートし、その後30日程度まで速やかに進行し、それを過ぎると比較的穏やかになります。有機肥料が「土になじむ」というのは、この速やかに進む無機化が収まる時期までと解釈すれば、施用後1ヶ月程度と言えます。ただし、土へのなじみ方、言い換えれば有機肥料の無機化に必要な時間は、肥料の種類、畑の土の種類、土の水分の他に、とくに土の温度(地温)の影響を大きく受けます。これは地温が高いほうが、有機肥料をエサとして活動する土壌中の微生物が活発に活動し、無機化がより速く進むからです。気温が高ければ地温も高くなるので、気温は有機肥料の土へのなじみ方に大きく影響します。
ところで、植物の根はアンモニアや硝酸などの無機物を吸収することができますが、たんぱく質などの有機物は、通常は根から直接吸収することができません。有機肥料は無機化の過程を経て、初めて植物に吸収されるようになります。このように有機肥料は徐々に無機化しながら、化学肥料よりもゆっくりと植物に養分を供給するので、トマトやナスなどの比較的生育期間が長く、肥料を長く効かせたい果菜類の元肥として特に適しています。これらの作物に利用する場合は、植えつけの1~2週間前までに施用して、予め無機化をスタートさせておきます。このことで、生育初期の肥料の効きが良くなります。暖かい時期は短めに、寒い時期は長めに、この時間差は必要です。
また、土に混ぜ込んだ直後の、無機化がまだスタートしていない有機肥料の、特に油かすは、その臭いで「タネバエ」という害虫を誘引します。タネバエは幼虫が土に生息し、たねまき直後の作物の種子や、発芽後の作物の幼根を食害します。トウモロコシやエダマメなどのタネバエが好む作物を畑に直まきする場合や、ダイコンやコカブなどの根を収穫の目的とする作物を有機肥料で栽培する場合には、タネバエの被害を回避するため、施肥からたねまきまでの時間を特に長めにとる必要があります。これらの作物の場合、たねまきの20~30日前に有機肥料は施用して、土に十分になじませておきます。
