発芽したホウレンソウがなかなか生長しません。
ホウレンソウの生育が不良になる原因として、第一に考えられるのは土壌の酸性化です。ホウレンソウは酸性土壌を嫌う作物の代表格です。pH6.5以上の土壌を好み、pH6.0以下では生育不良になり、pH5.5以下ではほとんど育ちません。
過去1年以上にわたり石灰類を施用していない畑では、土壌の酸性を矯正するために苦土石灰を1m2あたり200g程度、1年以内に石灰を施用している場合でも同50〜100g程度を、たねまきの2〜4週間前に施用してください。土壌pHを測定できる場合は(2021年10月号参照)、pHが6.0より低い場合は同200g、6.0〜6.5なら同100g、6.5〜7.0なら50g程度を施用してください。ただし、酸性土壌を嫌うと言っても、土壌pHが高すぎると、マンガンやホウ素などの植物に必須の養分(微量要素)が土の中の水分に溶けにくくなり、根がそれらを吸うことができず(根は水に溶けた養分を吸うので)、葉が黄化するなどの欠乏症状が現れることがあります。このため、石灰類は過剰施用にならないようにも注意が必要です。例えば、石灰類を作付け毎に年に複数回施用すると、2〜3年後には土壌pHが7以上になる場合があります。このような場合は石灰類の施用は不要です。
ホウレンソウの生育不良の原因として第二に考えられるのは、ホウレンソウが根を張る有効土層(2022年8月号参照)のどこかに、ホウレンソウの根張りを遮る硬い層(硬盤)があることです。ホウレンソウの根は、通常は地表から1m以下の深さにまで張ることができます。根を張る途中に硬盤があると、良好な生育に必要な深い層まで根を張ることができなくなり、生育不良の原因になります。
硬盤は作土直下の20〜30cmの深さにできやすいので、ホウレンソウの作付け前には、硬盤を壊すように意識して深く耕してください。完熟堆肥を1m2あたり1kg程度施用すると、団粒化(2022年9月号参照)が促進され、硬盤ができにくくなるので、より効果的です。堆肥を施用する場合は、たねまきの2〜4週間前に施用してください。たねまき直前の堆肥施用や未熟堆肥の施用は、ホウレンソウに発芽障害を起こす場合があるので注意してください。