良い土の特徴や見分け方を教えてください。
良い土の特徴について説明する前に、作物にとっての土の役割をまずはおさらいしておきましょう。土の役割は大きく分けると、作物が①根を張り作物の体を支え、生育に必要な②水分、③空気、④養分を貯え、また②~④を根に供給し、根を⑤有害物や、⑥病害虫などから守る、などの働きを担っています。したがって良い土の特徴とは、これらの役割を十分に発揮する、①適度な柔らかさを持ち、②保水性が良く、③通気性・排水性が良く、④肥料の持ちが良い、⑤酸やアルカリに偏っていない、⑥病害虫の天敵となる生物が多く生息する土、と言えるでしょう。
これらは見た目や手触りで、ある程度判定することができます。
①の土の柔らかさについては、畑に竹の棒などを刺してみることで、簡易に判定することができます。少なくとも20~30cmぐらいの深さまで、大きな力を加えなくても棒が刺されば、適度な柔らかさを持つ土と言えます。
②保水性が良く、③通気性・排水性が良く、④肥料の持ちが良い土かどうかは、土の手触りで判断することができます。一般に粒の大き目な砂質の土は、排水性は良好ですが保水性や肥料の持ちが悪く、逆に粒の微細な粘土質の土は、排水性は不良ですが、保水性や肥料の持ちが良い土です。
少量の土を片方の手に取り、その少量を反対の手の親指と人差し指の先に挟み取り、指と指の間で土をゴロゴロとこねたときの感触が、ザラザラして粒の粗い砂のように感じる土は、排水性や通気性は良いですが、保水性や肥料の持ちが悪い砂質の土です。同様に指先の間でこねたときに、小麦粉よりも細かい粒を感じるような手触りで、指先に粘着し、コヨリのように細い棒状になるような土は、肥料の持ちは良いですが、通気性や排水性の悪い粘土質の土です。
その中間の、ザラザラした砂と、ねばねばした粘土とを、半々ぐらいに指先に感じる土は、保水性と排水性という相反する性質を併せ持ち、かつ肥料分を程よく保持し根に供給することができる、良い土と言えます。砂でも粘土でもない、このような土を「壌土(じょうど)」と呼んでいます。色々な畑の土を触って感触を確かめてみてください。ただし、作物によっては壌土よりも砂質や粘質の土のほうが、品質の良いものが収穫できる場合もあります。例えばサツマイモは砂質の土のほうが甘くなり、サトイモは粘土質の土のほうが食感が良くなると言われています。
⑤の酸やアルカリに偏っていない土を、見た目で的確に判断することは困難ですが、一般にスギナやオオバコが良く生育する土は、酸性気味と言われています。また土の色が黒いほど「腐植」と呼ばれる有機物を多く含んでいます。腐植は土が酸やアルカリに偏るのを和らげる働きを持っているので、黒い色をした土ほど酸やアルカリに偏りにくい、良い土と言えます。
⑥の病害虫の天敵となる生物が多く生息する土には、天敵以外にも多種多様な生物が生息しています。それらの中で見つけやすいのはミミズです。ミミズが直接病害虫の天敵になるわけではありませんが、ミミズが生息しやすいような土は、生物のエサとなる有機物が豊富で、ミミズ以外の多種多様な生物が生息しています。このような多様な生物が棲む環境では、特定の病害虫だけが大手を振って生息することが困難になり、作物の根が土の中の病原菌や害虫に侵されにくくなります。このような土は堆肥などの有機物を投入して丹念に土づくりを行った結果できるもので、良い土とは人が丹念に作りあげた土とも言えます。
