キノコのある食生活 【菌食のススメ】

無限の可能性を秘めたキノコのチカラに注目
キノコのある食生活を楽しもう

菌食(マイコファジィ)※ はキノコなどの菌類を好んで食べることをいいます。菌類にはキノコをはじめ、麹菌や乳酸菌など、近年、体によいと知られているものばかり。腸内環境の改善や生活習慣病の予防などに、菌食をとり入れた食生活が注目されています。今回はキノコに着目。キノコの力や魅力について、キノコ博士でもある東京農業大学の江口文陽学長にお話を聞きました。

※マイコ(Myco)はキノコを含む菌類のことで、ファジィ(Phagy)は「貪り食う」「好んで食べる」を意味します。キノコをはじめ、みそや納豆など菌類が発酵した加工食品を積極的に食べる人のことを菌食者(マイコファジスト)といいます。

── キノコとは?
江口 キノコは動物でも植物でもない微生物の仲間、菌類です。光合成をせず、枯れた樹木や落ち葉などを分解しながら栄養を吸収して自分の体を作ります。食物連鎖のピラミッドでは食べることで栄養を摂取する「動物」、自ら栄養分を作り出す「植物」がいて、キノコは底辺の分解者。キノコが養分を吸収し分解した樹木や死骸は土にかえるので、キノコは地球環境をきれいに保ってくれる生物と位置づけられています。

── キノコの特徴は?
江口 種類によってさまざまな機能性を持ちますが、全般にいえるのは、まず「食物繊維の宝庫である」ということ。食物繊維は腸のぜん動運動を促し、不要なものは便として体外へ排出する働きがあります。腸がきれいになると体によい物質が血液へ。便秘が解消されれば肌荒れや吹き出物がなくなり美肌にもつながります。また、ビタミンやミネラルが豊富で、脂質は少なく低カロリーという点も特徴です。ほかにも美白に関係するトレハロースや、免疫力を高めるβグルカンといった多糖類も含まれています。キノコは体の中の美しさ、それから外の美しさも引き出してくれるような食資源であるといえます。食の欧米化がすすみ、生活習慣病が増えるなか、腸内環境を整えることが大切といわれています。腸の活性化にもキノコは力を発揮してくれます。

── スーパーで買えるキノコの特徴や活用方法を教えてください。
江口 シイタケは血中コレステロールを下げる働きのあるエリタデニンを含みます。干すことで香り成分も倍増。水戻ししてちらし寿司などに使うと香りよく仕上がります。エノキタケは食物繊維が豊富。歯ごたえを生かして、薄切りの牛・豚肉で巻いて焼くと非常においしい。おが粉のついた株元以外は食べられるので軸を切り落としすぎないように。マイタケにはタンパク質分解酵素が含まれるので、肉に下味をつける際、マイタケも一緒に漬け込むと硬いお肉をやわらかくしてくれます。ブナシメジはがん抑制効果について研究されています。少しえぐみや苦みがありますが、鮮度がよいうちに食べれば感じません。また、キノコらしい形は目でも楽しませてくれます。スーパーに並ぶキノコの大半は施設で人工栽培されているので、いつでも旬だといえます。

── キノコの魅力は?
江口 自然を浄化し、食べるとおいしく、人の体にもよい働きをもたらすキノコは非常に高い能力を持っています。まだまだ分からないことが多く、無限の可能性を秘めた生物であるということも魅力ですね。

プロフィール

江口文陽( えぐちふみお )
東京農業大学 学長。1965年群馬県生まれ。2021年から現職。高校3年生の時、がんを患った父親にキノコ由来の成分を含む薬が処方されたことでキノコに興味をもち、東京農大へ進学。キノコの種や栽培から流通、利活用、食べることでの人への効果まで広く研究している。好きなキノコは「タマゴタケ」。キノコグッズも収集し、4,500種類ほど所有している。

なるほど情報

味や栄養を損なわない上手な保存方法

冬菇と香信
【天日干し】カビないようにしっかり乾燥させます。シイタケはビタミンDが増え、うま味も凝縮。水戻ししてから使います。軸もよいだしがでます。干しエノキタケは抽出してお茶のように飲むのもおすすめ。
【冷凍】冷凍するとキノコの硬い細胞壁が壊れ、うま味成分が出やすくなります。切って冷凍すれば、そのまま調理に使えて便利。なるべく平らにして袋に入れて冷凍します。

2022.10更新

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