素材のおいしさを活かす【だし】

うま味たっぷり「だし」の魅力を再発見

2013年、ユネスコの世界無形文化遺産に和食が登録されました。
「だし」は、和食のおいしさを生み出すベースです。「だし」から抽出される「うま味」は1908年に日本人によって昆布から発見され、甘味・酸味・塩味・苦味とともに五味の1つとして、今や世界でも「UMAMI」で知られています。
野菜だしや水だしなど、素材の組み合わせや抽出方法などのアレンジも広がっている「だし」。
その種類やうま味成分などについて改めて探ってみました。

 うま味の三大成分は「グルタミン酸」「イノシン酸」「グアニル酸」で、これらはさまざまな食品に含まれています。グルタミン酸は昆布や野菜などに、イノシン酸は魚や肉類に、グアニル酸は干しきのこ類に多く含まれますが、すべての食材から「だし」は取れます。食材を煮詰めてうま味を引き出し、煮だした汁がだしです。うま味がたっぷり染み出た汁を料理に活用すると、味が複雑になっておいしさがアップするうえ、塩分や調味料を減らすことにもなり健康的です。
 和食では、昆布、かつお節、煮干しなどが定番のだし素材です。だし用の昆布は、懐石料理の椀物などに使われる利尻昆布、柔らかく関東以北で使われる日高昆布など、種類によって味わいが違います。かつお節は鰹を煮て燻しながら乾燥させた荒節を削ったもの。地域によっては、サバやムロアジ、あご(飛魚)もだし素材として使われています。
 また、乾しいたけは香りと豊かな風味が和食にも中華料理にも合います。野菜では、コクが出るごぼうは煮物などに向き、ネギやニラは味の引き締め役です。甘みの出るタマネギや人参は調味料を使わない離乳食でよく使われています。大豆、かんぴょう、切り干し大根などは淡い甘みのあるだしが取れるので、精進料理に欠かせません。
 野菜のヘタ、芯、皮、種など、普段捨てている部分にも注目。まとめて煮だすと複数の野菜のうま味が合わさった野菜だしに変身します。タマネギや人参の皮、ピーマンのヘタや種、セロリの葉、トウモロコシの芯やヒゲなどを冷凍しておき、ある程度たまったら煮だしてカレー、汁物、煮物などに使いましょう。野菜を無駄なく使うことで食品ロス削減にもつながります。
 うま味成分は組み合わせることで、うま味が一層高まります。お正月料理の煮しめなどは、このうま味の相乗効果を上手に活かした料理です。
 だしを取るのは面倒と思われがちですが、耐熱ガラスのポットにだしを取る食材を入れて電子レンジにかけたり、水に入れて一晩置いたりするだけでもおいしいだしが取れます。カット野菜と昆布を水に浸しただしは、料理に合わせやすくまろやかな風味が特徴です。
 寒さが身に染みる冬、具材のうま味を活かした煮込みや鍋を手始めに、だしをもっと身近にとり入れる生活を始めてみませんか。

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2023.01更新

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