新鮮な野菜や果物などの食品をはじめ、たくさんの商品が並ぶスーパーやコンビニ、さらにネットで買い物することも日常となっています。生産する人、運ぶ人がいるから成り立つ便利な生活ですが、特に運送は私たちに見えにくい仕事です。
トラック運転手の仕事は運転だけにとどまらず、荷物の積み込み、待機、目的地に着けば荷下ろしまで。長時間労働を規制する働き方改革が適用され、それによってトラックの輸送能力は、何も対策を行わないと新型コロナウイルス感染拡大前の2019年度と比べて2024年度は約14%、2030年度には約34%も不足すると試算されています。※1
全農も効率的に荷物を運ぶ工夫をしています。日清食品とは、カップライスの原材料として使う米と即席食品などを、往路と復路で交互に運ぶ「ラウンド輸送」に取り組んでいます。お湯を注いで食べる「カレーメシ」などの即席カップライスの原料米を全農が供給していることが縁で、原材料の調達・供給だけでなく、物流に関しても連携を始めました。
まず取り組んだのは「岩手―茨城間」と「福岡―山口間」の2区間での共同輸送です。
岩手―茨城間では、岩手にあるJAおよび全農の米穀保管倉庫から関東にある精米工場へ米をトラックで輸送した後、同じトラックで茨城にある日清食品の生産工場から岩手の製品倉庫へ即席食品を運びます。輸送効率の指標である実車率※2 が約12%も高まる見込みです。
福岡―山口間では、福岡にある全農の精米工場から山口にある日清食品の生産工場へカップライスの原料米をトラックで輸送した後、同工場で製造された即席食品を福岡の日清食品の製品倉庫に運びます。空きパレットなどの物流資材も一緒に効率よく福岡に戻せるため、従来に比べて、トラックの積載率は9%改善し、CO2排出量が17%削減できる見込みです(図)。
パレットとは輸送、荷役、保管のため、荷物を載せる荷台のこと。穴の部分にフォークリフトの爪を差し込んで使います。パレット単位で荷物をまとめられ、手作業でバラ積みするより時間が短縮でき、トラック運転手の負荷が軽減されます。
全農は青果物のパレット輸送の普及を進めていますが、レンタルパレット導入にあたり、紛失が課題になっています。そこで、パレットが今どこにあるか、どんな商品を積んでいるか、スマートフォンやPCなどで情報を見える化しようと「パレット共通管理システム」の開発に取り組んでいます。
また、トラックに頼らない輸送(モーダルシフト)にも取り組んでいます。JR貨物と、昨年11月から米専用貨物列車「全農号」の定期運行を始めました。青森県を出発し、米どころ秋田・新潟・石川各県でも米を積み込み、大阪までコンテナ100基を積載して500tの米を輸送。米輸送の一定量を鉄道に換えることで、長距離輸送力の安定的な確保につなげるほか、輸送中のCO2排出量の大幅削減も狙います。
全農は、業界や業種の垣根を超えて協力関係を広げ、鉄道・海上輸送への転換も検討するなど物流の効率化を目指します。
※1 経済産業省「持続可能な物流の実現に向けた検討会」2023年8月31日最終取りまとめ
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/sustainable_logistics/index.html
※2 トラック1台当たりが走行した距離のうち、実際に貨物を積んだ距離の比率