地域共生社会を目指す【農福連携】

農業と福祉の多様な結びつきが
新しい地域おこしにつながっています

「農福連携」という言葉を聞いたことはありますか?
障がいのある方が農業分野で活躍することで、自信や生きがいを持って社会参画や就労を実現していく取り組みです。農業と福祉、双方の課題解決などメリットが多く、注目されて全国に広がりを見せています。

 農林水産省によると、基幹的農業従事者は、2000年の246万人から2022年の123万人へと約20年間で半減し、平均年齢も61.1歳から68.4歳と7歳も上昇。※1 生産現場の労働力不足は深刻さを増しています。農福連携は、障がい者などの社会参画を後押しするとともに、農業の新たな働き手の確保や農業経営の発展につながる可能性が期待されています。
 障がいを持つ方はそれぞれ得意な仕事と苦手な仕事があります。一つの仕事を繰り返し行うのが得意だったり、農作業に伴う体力仕事が得意だったりする一方、二つ以上の作業を同時に行うことは苦手だったりします。
 農業は多くの工程を経て、農作物が作られますが、一連の作業を単純な作業に細かく分解してみると、障がい者の方ができる作業が見えてきます。例えば、繁忙期の収穫作業では、収穫した農作物を畑の外に運ぶ、収穫物を洗浄する、根切り・葉切り、計量、出荷用の箱作り、箱詰め、シール貼り等。単純化・細分化した作業の一つひとつは小さな仕事でも、農場全体や地域で集めていけば、大きな仕事量になります。それらの仕事を任せられれば、農業者はその時間をほかの仕事に充てることができます。

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労働力支援として、育苗箱の苗を田植え機に渡す「苗継ぎ」作業を行う様子
 農業者と福祉をつなぐには、両者をマッチングすることが大切です。福島県では少子高齢化や震災の影響などにより、農業の労働力不足が大きな課題。そこで、全農福島県本部が2019年から取り組みを始めたのが、農福連携です。
 福祉事業所側の窓口となる福島県授産事業振興会と協働し、労働力が足りない農業者やJA施設において、近隣の福祉事業所に農作業を請け負ってもらうスキームを構築しました。どのような作業なのか、どの程度できるか、事前に両者が認識を深め、納得できるよう実際に農作業を体験できる農福連携現地体験会も開催して、マッチングを推進しています。2022年度の実績として、県内で延べ2000人が農作業に参加し、農業者からは「とても助かったよ」「次の年も継続して取り組みたい」などの声が届いています。
 栽培品目にもよりますが、農作業は定植や収穫など繁忙期が短期間に集中するため、雇用による労働力補填は難しいのが実情です。人手不足から「年に1週間だけ労働力のサポートがあれば生産規模を増やせる」という農業者にとって、パート雇いではなく1日からでも依頼できるこの仕組みは大きなメリットになります。
 農業・農村における労働力不足と同様に、福祉(障がい者)側には就労先の確保や工賃の引き上げなどの課題があります。「農業の多様な働き手の確保」と「新たな就労の場の確保」により双方の課題解決とメリットがあるWin-Winの取り組みが農福連携です。
 全国各地において、農福連携は広がりを見せています。さらに、農と福が生み出す新たな価値への期待から、「農」は農林水産業や6次産業、自然全体へ、「福」は人全般へと定義も広がっています。「農福連携等」は持続可能な地域社会づくりのキーワード。全農もJAや地方自治体、国などと協力しながら農福連携をさらに進めていきます。

※1 法務省・文部科学省・農林水産省・厚生労働省「福祉分野に農作業をver.11」
https://www.maff.go.jp/j/nousin/kouryu/noufuku/pamphlet.html

参考:農林水産省「農福連携の推進」
https://www.maff.go.jp/j/nousin/kouryu/noufuku/index.html

2024.05更新

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