肥料をまくタイミングは?

指導◎岡本 保(JA全農 肥料研究室技術主管)イラスト◎かとうともこ

Q苦土石灰と完熟堆肥はたねまきや植えつけの2週間以上前、元肥は1週間前と、なぜ時間差をつけて混ぜ込むのですか?

A 時間差をつけて混ぜ込むのは、土に馴染むまでの時間差があるからです。苦土石灰は水に溶けにくく、有効成分として含まれるカルシウムやマグネシウムなどが、時間をかけて徐々に溶けながら効果を発揮します。完熟堆肥も微生物のエサとなることにより、時間をかけて徐々に分解されながら多様な効果を発揮します。この時間を考慮して苦土石灰や完熟堆肥は、たねまきや植えつけの2週間以上前に施用します。これに対して元肥に利用する化学肥料は、速やかに水に溶けて土に馴染み、植物に吸収される準備が整うため、植えつけの1週間前位に施すのが適当です。施肥から植えつけまであまり時間を置き過ぎると、肥料が降雨により流れて無駄になることがあるからです。元肥に菜種油かすや魚かすなどの有機肥料を利用する場合には、化学肥料よりは効果が現れるまでに時間がかかるので、やや早めに施用しますが、堆肥に比べると分解が早いので、これらの施用も順番としては石灰や堆肥の後になります。
 かつては、石灰資材と堆肥も時間差をつけて撒くようにと言われていました。これは堆肥中のアンモニアが石灰中のアルカリ分と接触すると、アンモニアがガスとして揮散し、作物にガス障害が発生したり、窒素成分が無駄になることを避けるためでした。今でも、アンモニアを多く含む未熟な堆肥と、アルカリ性の強い石灰資材である消石灰とを組み合わせて利用するような場合には、時間差をつける必要があります。完熟堆肥と苦土石灰の組み合わせなら、同時に混ぜ込んでもアンモニアガス障害の心配はほとんどありません。

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2020.02更新

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