5~6品種を使い分けて栽培
「小松菜は江戸川区の特産野菜として、都内1位の生産量を誇ります。江戸川区はその他にも枝豆やタカナなどの生産量も多く、東京23区内でも都市農業がさかんな地域です」と、JA東京スマイル経済営農指導部営農指導課の西山公也考査役。
かつて100万都市だった江戸は世界でも類をみない一大消費地であり、多くの野菜が栽培された田園都市でもありました。江戸期から始まる東京の野菜文化を継承する「江戸東京野菜」のひとつに「ごせき晩生(ばんせい)小松菜」という江戸川区の在来品種がありますが、今では栽培する生産者が少ないそうです。
「小松菜は品種改良が盛んに行われています。うちでは収穫時期に合わせて、試作の種も入れると5~6品種を使い分けて、一年中、小松菜を栽培しています。伝統品種の”ごせき晩生”は栽培が難しく、葉や茎が柔らかくて傷つきやすいので、栽培スケジュールに組み入れるのは難しいですね」と、生産者の小島啓達(ひろさと)さん。小島さんは長距離ランナーとして大学で箱根駅伝を目指し、実業団でも4年間の選手生活ののち、後継者として農業の世界に飛び込んだという経歴の持主です。
「陸上一筋でしたから小松菜を作るなんて全く考えていなかったです。でも、自分で考えて、天候や生育状況を予測しながら、マイペースでできることを考えたら農業は合っていました。それにうちは代々農家で、農業を辞めてしまったらここは畑がすぐコンクリートになってしまう。そうなったら、二度と畑に戻せないし農業ができなくなってしまいます」と、小島さん。
小松菜の栽培は一から両親に教えてもらい、今は別々に栽培を手がけ、一人で約700坪(約2300m2)のハウスを管理しています。
根付きスタイルで出荷
取材をしている間も手を休めることなく小松菜の株を抜き取り、下葉をとって長さを揃えて1束600gにどんどん束ねていきます。束の大きさは出荷先で異なるそうです。伸びた根を付けたまま出荷する「根付きスタイル」が、いかにも新鮮で美味しそう。出荷先は東京の大田市場のほか、学校給食にも供給しています。

「どんな小松菜が美味しいかとよく聞かれますが、人によって好みが違うので一概に”甘くて美味しいよ”とはいえないですね。季節や品種によって葉の厚みや柔らかさ、食感なども変わってくるので、まずは食べてみて自分好みの味を見つけてほしいです」と、小島さん。
小松菜に含まれるβ(ベータ)カロテンは体内でビタミンAになります。ビタミンAは、のどや鼻などの粘膜を正常に保つなど、さまざまな働きがあります。また、ビタミンCや、不足しがちな鉄分、カルシウムの含有量は野菜の中でもトップクラス。その、小松菜に含まれるカルシウムや鉄は、肉や魚と組み合わせることで、βカロテンは油で炒めたりすることで効率よく摂取することができます。調理が簡単で、用途が広い小松菜は毎日の食卓に役立つこと請け合いです。
●JA東京スマイル
【小松菜】生産概要
栽培面積:約233ヘクタール
収穫量:約4100トン
主な出荷先:東京
(2018年度「東京都農作物生産状況調査報告書」)
