きほんの「基」・家庭菜園ハンドブック~ビギナー向け用語集~

目次

苗の選び方

小さな菜園やビギナーの方にはタネから育てるより、良い苗を購入して始めると失敗が少なくておすすめです。農作業では「苗半作」といって、苗作りが成功したら野菜作りは半分成功したようなもの、という言葉があるほどです。ちょうど4月頃から夏野菜の苗がたくさん販売されるので、よい苗を選ぶコツを紹介します。
トマトやナス、ピーマンなどの果菜類の苗は、以下のポイントをチェックしましょう!

  • 茎ががっちりとして節間が詰まっていること
  • 緑色が濃くみずみずしい葉であること
  • 子葉(双葉)がついていること
  • 病気や虫食いがないこと
  • 一番花房がついていること
接ぎ木苗って?

普通の苗(自根苗)の2~3倍もの値段がついた「接ぎ木苗」が売られています。接ぎ木苗は台木(根)と茎葉(穂木)が違う苗で、両方の性質のいいところをつなぎ合わせ、連作障害や病害虫に強く、収量が多くて育てやすい苗のことです。
値段は高いですが、接ぎ木苗を植えると元気によく育ち、たくさん収穫が楽しめます。

植えつけ

苗の準備ができたら、いよいよプランターや畑に植えつけ(定植)です。
購入した苗はすぐ植えつけるのではなく、4~7日間くらいポットのままおいて新しい環境に慣れさせてから植えつけましょう。
植えつけする日は、なるべく風のないよく晴れた日を選びます。また、日中の暑い時間帯や直射日光が当たる時間はさけて、日差しがやわらいできた涼しい時間帯に行いましょう。

  1. 植えつけ当日の朝、ポット苗にたっぷり水やりします。
  2. 植えつける場所にポット苗を置いて位置を確認します。
  3. 植えつけるための植え穴を、根鉢より少し大き目に移植ごてを使って掘ります。
  4. 植え穴に水をたっぷり注いで、完全に水がひくまでまちます。
  5. 根鉢を崩さないようにポットから苗を抜き、畝の高さと根鉢の表面が揃うように植え穴に植えつけます。接ぎ木苗の場合は、接ぎ木した部分を絶対に埋めないように注意しましょう。
  6. 土を寄せて苗の表面を平らにならし、両手のひらで株元を軽く押さえて苗を安定させます。

水やり

水は与えすぎても少なすぎてもよくありません。
土が乾かないうちに水をかけると、土の中の酸素が不足して根が呼吸できなくなり、根を傷めたり、腐らせてしまうことになりかねません。また、乾き過ぎても枯れさせてしまう原因になります。
水やりのサインは株元の土が白く乾いてきたら。日々野菜の生長や土の乾き具合をチェックして、1度の水やりで土をしっかり湿らすように与えましょう。泥が跳ねないようにできるだけ低い位置から、ジョウロなどを使って株元にやさしくたっぷり与えます。
夏場の水やりは、日があたっている時に水やりすると、土に含まれた水の温度が上がって根が弱るので、早朝か夕方の気温の低い時間に行いましょう。逆に冬場は気温が低い早朝や夕方は避け、気温が上昇してきた午前中に行います。
プランターや鉢で栽培している場合は、プランターの底から水が流れ出るくらいたっぷりと与えます。受け皿にたまった水は捨てましょう。
水やりに使うジョウロはハス口が取り外せるものを選び、種まき直後や苗が小さい時はシャワーノズルを使って水やりしましょう。

害虫予防

家庭菜園を楽しむなら、美味しくて安心して食べられるものを育てたいですよね。
野菜の栽培に害虫は付き物ですが大切なのは「予防」です。まず、適度な日当たり、養分、水を与えて、風通しのよい環境で育て、虫がつきにくい丈夫な株に育てること。さらに、寒冷紗や防虫ネットなどをかけて害虫の浸入を防ぐ(アオムシやコナガなど、特にアブラナ科の野菜は被害を受けやすいので注意が必要)こと。
そして、最後は毎日観察して、早期発見することです。害虫は徐々に全体的に広がっていくので、幼虫などを見つけたらすぐに割りばしなどでつかんで取り除きましょう。アブラムシなどビッシリとついてしまったら、粘着テープを利用したり、強めの水で洗い流したりして除きます。ヨトウムシは夜間に活動するので、株元や回りの植物などもよく観察しましょう。
畑にはたくさんの生きものたちがいます。害虫もいますが、それを食べる天敵のクモやカエル、テントウムシなどもたくさんいます。害虫が多少発生するのは当然なので、適切に管理しながら上手に付き合っていきましょう。

芽かき

「芽かき」(わき芽摘み)というのは、主茎から出てくる新しい茎の芽(わき芽)を摘んでしまうことです。わき芽は生長がとても早く、そのままにしておくとどんどん伸びて、葉が茂りすぎて日当たりや風通しが悪くなります。また、実がついても大きくならず、味も美味しくありません。つまり、枝の数を制限して、大きくて美味しい実をつけさせるための作業が「芽かき」です。トマトやナス、ピーマン、キュウリなど実を収穫する野菜では大切な作業です。
わき芽ができたら小さいうちに指でつまんで、もぎ取りましょう。

【ナスの場合】

1番花のすぐ下のわき芽2本を残して、それより下のわき芽はすべて摘み取り3本仕立てにします。再度でてきたわき芽も摘み取りましょう。

摘芯

草丈がある程度大きくなったら、実の方に十分な栄養が届くようにするため主枝の先端を摘み取る「摘芯」をします。また、わき芽を伸ばすための「摘芯」もあります。
たとえば、トマトは主枝が支柱の先端まで届いたら(5段目の花房あたり)摘芯します。もう上に伸びる生長はストップして実を太らせることに専念してもらうためです。
シソの場合は、ある程度大きくなったらわき芽をどんどん伸ばすために摘芯します。
スイカは、子蔓に実をつけさせるために親蔓の先端を本葉5~6枚と小さいうちに摘芯します。勢いのよい子蔓を3~4本伸ばして1果ずつ付けて育てるためです。
摘芯は主枝の先端にある生長点をハサミで切り落とすか手で摘み取ります。
摘芯をしたら追肥をするように心がけましょう。

【シソの場合】

土寄せ

生長に合わせて、株元に土を寄せて安定させる作業です。タイミングとしては、苗を間引いた際や追肥の際に行いましょう。株元をしっかり安定させて倒伏を防ぐ、水はけをよくする、肥料が雨で流れ出るのを防ぐ、雑草の発生を防ぐ、などの効果があります。
また、ジャガイモやニンジン、サトイモなど日があたると変色してしまう場合などは、しっかりと土寄せして緑化防止します。長ネギを軟白(白くする)する場合は土をたっぷり寄せて高く盛り上げます。低くなった畝を高くすることで、排水もよくなります。

【シュンギクの場合】

増し土

間引きをしたあと土が減ったり、野菜が大きくなって株元が出てきて、寄せ土だけでは足りなくなったら「増し土」をしましょう。プランターの場合は培養土などの新しい土を入れて、株元に寄せて軽く押さえるようにします。培養土には肥料も含まれているので、追肥の効果も得られます。

仮支柱

苗を植えつけた後に、倒れないように根付くまで支えてやるのが「仮支柱」です。30cm程度の短い支柱を斜め(または真っ直ぐ)にさします。蔓が伸びる野菜や実がなる野菜などは、苗が完全に根付き、蔓や側枝が伸び始めたら、長い本支柱を立てて株を支えます。支柱を立てることにより、株が風や実の重さなどで倒れるのが防げ、蔓や葉を立体的に育てられるので風通しや日当たりがよくなります。
支柱と茎は8の字結びで、茎が太くなるのでゆとりをもたせながらもずりおちないようにしっかりと固定しましょう。

連作障害

今年は何を作ろうかな、と植えつけプランを立てるのは楽しいですね。同じ畑に野菜を植えつける場合、まず押さえておきたいのが「連作障害」です。同じ土で同じ種類の野菜を何度か育てると次第に育ちが悪くなるのが「連作障害」で、特定の細菌やウイルスなどの病原体が土の中で増えてしまっていたり、土の中の栄養分を始めとした物質のバランスが崩れることで発生します。この障害を防ぐために他の科の野菜を植えて、輪作を行います。
野菜によって連作障害の差があり、何年もあけた方がよいものと、毎年続けて作っても影響の少ないものがあるので、表1を参考にして畑の植えつけプランやローテーションを組むとよいでしょう。最近は接ぎ木苗や連作障害に強い品種なども出ているので、うまく活用するのもおすすめです。
プランター栽培の場合は土を入れ替えれば大丈夫です。

pH測定

家庭菜園で大切なのは、まず栽培に適した土づくりをすることです。よい土壌をつくることで野菜が元気に美味しくたくさん育ちます。
たねまきをする前に土の酸度を測定しましょう。雨の多い日本の土壌は石灰が流れて酸性に偏りがちです。ほとんどの野菜は弱酸性から中性の土壌でよく育つので、土壌を改良する必要があります。自分の畑の土壌が酸性かアルカリ性かは見ただけではわからないので、市販されているpH試験紙やpH測定器を購入して測定しましょう。
(スギナやオオバコなどの雑草がはびこっている畑は酸性土といわれています)
これまでナスやホウレンソウを栽培していて生育障害があった畑は酸性土を疑ってpH測定をし、土づくりを行うとよいでしょう。

【カラーチャートと照らし合わせてpH値をチェックします】

プランターの土づくり

プランターで家庭菜園をはじめるとき、どのような土を選んでいますか?プランターは畑と違って根が張れるスペースが少ないので根詰まりや通気性が悪くなり、根腐れを起こしやすくなります。一般に保水性、排水性、通気性、保肥性のよい土が適しているといわれますが、初めからこういった条件がそろっている土はありません。そこで、栽培する野菜の特徴や用途に合わせて、様々な種類の土や肥料を混ぜ合わせて「土づくり」をする必要があります。
ビギナーにおすすめなのは、あらかじめ数種類の土をブレンドして、野菜の生育に適した状態にしてある「培養土」です。「野菜用の土」とか「家庭菜園用」と書かれたものを選べばOKです。
慣れてきたら、自分で用土を買ってブレンドするのも楽しいですよ。ごく基本的な配合は「赤玉土7:腐葉土3」です。これをベースに「ピートモス」「バーミキュライト」「堆肥」などの改良用土を加え混ぜ、育てる野菜の環境にあった土づくりをしましょう。

畑の土づくり

元気に育っている野菜をみると、つい「肥料がいい」と思ってしまいますが、「土づくり」が大変重要です。水もちや水はけのバランスが適度にとれ、通気性がよい土は微生物が生息しやすく、病気や害虫に強く健康な野菜が育ちます。そして何より美味しい野菜が収穫できます。
まず、畑を耕してカチカチになっている土をほぐします。雑草や石などを取り除きながら、深さ30cmくらいをクワやスコップを使ってよく耕し、柔らかくします。腐葉土やバーク堆肥など土づくり効果の高い堆肥を混ぜて耕します。堆肥は土壌微生物のエサとなったり、水はけを改善したりする働きがあります。牛ふん堆肥などは必ず完熟堆肥を選び、たねまきの2~3週間前には施しましょう。
また、日本の土は酸性土壌になりやすいので、pH測定をして酸性土壌に弱い野菜を作付けする場合は石灰資材(苦土石灰など)を入れて、中和させることも大切です。土となじんでpH調整の効果があらわれるまで時間がかかるので、作付けの2~3週間前には施しましょう。よく耕して土になじませ、土の表面を平らにならして終了です。

堆肥の種類

土づくりに欠かせない堆肥にはたくさんの種類がありますが、原材料によってその性質は異なります。
稲わらや落葉、樹皮などの植物質を主原料として発酵させた堆肥は、土壌の保水性、排水性、通気性などの物理性を改善し、固い土を柔らかくする効果がある堆肥です。一方、鶏糞や豚糞を主原料とする堆肥は、窒素や燐などの植物を育てるために必要な養分を補う効果がある堆肥です。牛糞を主原料とする堆肥は両者の中間的な特徴を持ちます。
選定の際には原材料表示を確認するとともに、悪臭が少なく水分が適量で扱いやすい、十分に発酵した完熟堆肥を選んで下さい。

防鳥対策

たねまきをしたのにいつまでたっても芽がでてこないことがあります。特にソラマメ、グリーンピースなどマメ科野菜やスイートコーンなどのたねは鳥の大好物なので、食べられている可能性があります。
たねまきをしたら不織布をベタがけするか寒冷紗をトンネル状にかけて予防しましょう。空のペットボトルを半分に切ってかぶせてもいいですよ(底の部分は切り取る)。本葉が2~3枚になれば外しても大丈夫です。
セルトレイやポットまきで苗づくりを行う場合も、外では鳥に要注意です!

間引き

芽が出たら、次の作業が「間引き」です。
小さいもの、ヒョロヒョロと細長いもの、形が不揃いなもの、虫食いのあとがあるもの、病気があるものなどを選び、残す苗を傷つけないように指かピンセット、ハサミなどを使って間引きましょう。
一度にたくさん間引くと大きくならなかったり、その後の生長具合によってカバーができなくなってしまうので、生育に合わせて数回行い、決められた株間にしていきましょう。
まず、発芽して本葉が開いたら、葉と葉がふれあう程度(1~2cm間隔)に間引きます。2回目以降は本葉3~4枚の頃、本葉5~7枚の頃を目安に行います。

「点まき」と「すじまき」の間引き

たねをまいて育てる野菜は、混み合った部分や生育の悪い苗を摘み取る「間引き」をします。根菜類など点まきで1ヵ所に4~5粒たねをまいた場合は、1~2回目で3本、3回目で1ヵ所1本にします。
すじまきの場合は、生育に合わせて株間が一定になるように混みあった場所を数回に分けて間引き、適切な株間にしていきます。

人工授粉

スイカ、カボチャ、ズッキーニ、メロンなどウリ科の野菜は雄花と雌花が別々に咲くので、家庭菜園では確実に実をつけさせるため、適切なタイミングで人工授粉させましょう。
受粉は晴れた日の早朝、遅くても9時くらいまでに作業を終わらせます。
雄花を摘み取り、雄しべの花粉を雌花の雌しべにやさしくつけてやります。
人工授粉した日付をラベルに書いて茎につけておくと、収穫のタイミングを判断する目安になりますよ。

追肥

追肥は作物の生育をよく観察しながら、少量ずつこまめに施用するのがコツです。トマトやナスなど、枝や葉を伸ばしながら収穫を長く続ける作物は追肥が必要です。生育期間の短い小松菜など葉菜類の追肥は不要ですが、低温期に栽培する場合は生育期間が長くなるので、追肥が必要になります。生育をよく観察して「葉の色が薄くなったな」と思ったら少量を追肥し作物の反応を観察してください。

直まきと移植栽培

ダイコン、ニンジン、ゴボウなどの根菜類は根が真っ直ぐに伸びないとよく生長しません。抜くと根を傷めてしまい、植え替えても枯れてしまうので、畑にじかにたねまきをして育てましょう。タネ袋に「移植を嫌うので直まきします」と書いてあります。
また、トマト、ナス、キュウリなどは植え替えても大丈夫なので、ポットなどで苗を育ててから畑に移植しましょう。接ぎ木苗など、苗を購入して育てる野菜はこのタイプです。

マルチ

土の表面を有機物やポリエチレンフィルムなどで覆うことをマルチ(マルチング)といい、覆う資材をマルチシートと呼びます。
マルチは、乾燥を防ぐ(保湿)、地温を高める、地温の上昇を抑制する、雑草を抑制する、雨による泥はねを防止するなどたくさんの効果が期待できます。特に黒色のポリエチレンフィルム(黒マルチ)は光を通さないため雑草対策に効果的で、日差しの強い夏は地温の急激な上昇を抑えてくれるなど汎用性が高く、マルチの主流となっています。また、透明のマルチは地温を上げる効果が高く、土の乾燥も防いでくれますが、光を通すので雑草が育ってしまいます。表面が銀色で裏が黒のダブルマルチはアブラムシを防除する効果がある他、穴あり、穴なしなどさまざまなマルチが販売されているので、使用する時期や目的、野菜などに合わせて適切に選んで使用しましょう。

参考:菜園プラン&人気野菜の栽培カレンダー

家庭菜園を始める前に、まず何をどのくらい作るかなど菜園計画を立てることから始めましょう。
まずは作ってみたい野菜をリストアップ。でも、ただ作りたい野菜を空いている場所に植えてもうまくいきません。たとえば、ネギは含まれている成分により病害虫対策に効果があり、スイカやメロンなどのそばに植えるといいとされていますが、豆類のそばに植えると生長を促進する根粒菌に悪影響をおよぼすのでよくありません。
また、野菜には1株で必要な広さがあります。狭いと元気に育つことができず失敗の原因ともなりがち。トマトやナスなど大きく育つ果菜類、キャベツやブロッコリー、ハクサイなどの大型の葉菜類は1株40~60cm四方の広さを確保したいもの。スイカやカボチャは蔓や葉が地面に広がるので2m四方くらい必要です。コマツナやホウレンソウなどの葉物は15~20cm四方の広さと考えると計算がしやすいでしょう。
 畑のレイアウトで注意したいのが草丈です。支柱を立てて茎や葉を誘引するトマトやキュウリ、背の高くなるスイートコーンなどは北側に植えつけて他の野菜に影をつくらないようにしましょう。葉物類など背が低く小ぶりな野菜ほど南側に配置すると、すべての野菜にまんべんなく日が当たるようになります。
 春まきと秋まきを上手に組み合わせれば1シーズン中に何種類もの野菜を育てることができます。2年目からは、同じ場所で同じ科の野菜を続けて栽培すると生育不良を起こす「連作障害」があるので、他の科の野菜を植えて輪作をしなければなりません。野菜によって畑を空ける期間に差があるので、畑のローテーションを考えながら上手に植えつけプランを考えましょう。

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